本書,小児看護学①『小児の発達と看護』は,新しい時代に対応する看護基礎教育テキスト「ナーシング・グラフィカ」の小児看護学のテキストとして編集しました. 今日,子どもの生活習慣病の増加,こころの問題,思春期の子どもの自殺,育児不安,児童虐待など,子どもを取り巻く社会や家族に深く関わる子どもの健康問題が増加しています.現代の子どもは,健やかに発達し生きていくことが困難な状況に置かれているといっても過言ではありません.母子保健の国民運動として取り組まれている「健やか親子21(第2次)」では,現在の母子保健を取り巻く状況を踏まえて,①切れ目のない妊産婦・乳幼児への保健対策,②学童期・思春期から成人期に向けた保健対策,③子どもの健やかな成長を見守り育む地域づくり,という三つの基盤課題を設定し,さらに重点的に取り組む必要のある課題として,①育てにくさを感じる親に寄り添う支援,②妊娠期からの児童虐待防止対策が示されています.私たち小児看護に携わる看護者は,権利を有する一人の人として子どもを尊重し,さまざまな健康レベルの子どもが社会の中で健やかに発達し生きていくことができるように,看護を提供していく責務があります. 本書では,子どもを発達していく存在であり,年齢や健康レベルにかかわらず,権利を有し行使することができる主体であるととらえています.そして,子どもを育む家族も看護の対象として位置付け,家族に対して看護を提供するとともに,家族と看護者がパートナーシップを形成し,子どもの発達を支援し,子どもにとっての最善のケアを提供することができるように家族と共に取り組むことが重要であると考えています.看護基礎教育レベルに照準を合わせた内容とし,全体を通して,子どもの権利の尊重,子どもの発達の理解と発達段階に応じた看護,家族への看護を重視して構成しています. 2018(平成30)年に日本看護系大学協議会から「看護学士課程教育におけるコアコンピテンシーと卒業時到達目標」の報告書が出されました.文部科学省からは,「看護学教育モデル・コア・カリキュラム〜学士課程においてコアとなる看護実践能力の修得を目指した学修目標〜」が提示されています.また,看護師国家試験出題基準(平成30年版)では,子どもの成長発達の特徴や生活に応じた,子どもと家族への支援,疾患に対する子どもの理解と説明やプレパレーション,診療・入院等が子どもと家族に与える影響,多様な状況にある子どもと家族への支援などに関する項目が整理・追加されています.はじめに
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