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以上のような経過を経て,私は看護学生用の解剖生理学の教科書の条件を考えるようになりました.①執筆者はできれば看護師の資格をもち,臨床経験のある方がよい.そのような方がいない場合は,臨床医としての経験が豊かで医学生だけでなく,看護学生も教えている医師でもよい.目的はもちろん臨床で必要な知識に重点を置いた記述をしていただくためです.②図版はわかりやすく,秀逸なものがよい.どんなに記述が正確で緻密であっても,百聞は一見に如しかずです.言葉での説明には限界があります.看護学生の場合,医学生が行う人体解剖実習を見学する機会さえもたない場合が多い現状を考えると,図版の重要性はどんなに強調してもしすぎることはないと思います.講義中にスライドを使って見てもらうとわかるのではないかという意見もあります.しかし一瞬見ただけでは,記憶に残りません.図版を見ながら考えることもできません. このような考えを抱くようになったころ,たまたまメディカ出版前社長の長谷川良人氏と話をする機会がありました.看護学生が活用できる教科書を作りたいという点で意見が一致し,具体化したのが本書です. 執筆者はできるだけ看護師の資格をもち,臨床経験を経た上で研究や教育に従事しておられる方を選びました.頁数の制約がある中で,どのような項目をどの程度まで詳しく記述するか,各執筆者の苦心の跡がうかがわれると思います.それゆえできれば外部からの講師に委託するのではなく,専任教員の手で解剖生理学も講義していただきたいと希望しています. 図版は当初の意気込みがなかなか実現せず,編集の方々の手を煩わせることが重なりましたが,従来の日本の教科書にはなかった “視覚に訴えるもの” になったと自負しています. 医学的知識や医療技術は日進月歩で変化していきます.本書が現在には対応できても,将来も役立つかどうかはわかりません.時代に即応する教科書として,改訂を続けたいものです.本書を使用された方々からのご意見,ご感想をいただけたら幸甚です.京都橘大学健康科学部教授・山梨県立大学名誉教授林正 健二
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