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(2)歯肉炎(gingivitis)●病態・症状・治療● 歯肉炎は,歯の表面に付着したプラーク細菌により歯肉に生じた炎症による疾患である.病変が進み歯根膜や歯槽骨等の歯周組織に炎症が及ぶと辺縁性歯周炎(歯し槽そう膿のう漏ろう)となる. 歯肉炎の症状は,歯肉の発赤や腫脹であり,歯磨きのときに歯ブラシが当たると出血することもある.辺縁性歯周炎に進行すると,歯肉の発赤や腫脹と歯周ポケットから排膿することもある.歯磨きの際に出血があり,さらに進行すると歯自体の動揺もみられる. 治療としては,歯垢の付着状況や歯周ポケットの深さ,炎症の状況,歯槽骨の状況と歯の動揺状態を検査し,状態に応じてブラッシング指導による口腔内保清,歯石の除去を行い,歯周病の場合には,歯周ポケットをなくすための搔爬や外科手術が行われることもある. 咽頭は気道と消化管の一部となる約12cmの管で,上咽頭(咽頭鼻部),中咽頭(咽頭口部),下咽頭(咽頭喉頭部)に分けられる(図1.1-21)).喉頭は,喉頭蓋により,咽頭での食物路と呼吸路を分け気道に食物が流れ込まないようにする役割と,声帯・声門により発声を行うという役割を担っている.(1)舌癌(tongue cancer)●病態・症状・治療● 舌癌は扁平上皮癌であり,口腔癌の中でも5割を占める疾患である.初期には病変部は白斑や紅斑を呈し,進行すると潰瘍となるが,初期の段階では患者自身が口内炎と思い込み,放置してしまう場合がある. 治療法としては手術療法,放射線療法,化学療法があるが,手術や放射線療法が主である.舌の手術は病変を切除する舌部分切除術,舌半側切除術,舌亜全摘術,舌根部も含めて切除する舌全摘術がある.舌の切除範囲が半側以上になると欠損部が大きくなることから,前腕部,腹直筋,大胸筋を使って再建が行われる.白はく板ばん症しょうや紅こう板ばん症しょうも悪性化することがあるため,病変部の切除が行われる. 舌の切除範囲と咀嚼能については,舌の切除範囲が半側より少なければ咀嚼の機能は良好であること,舌根部や舌尖部が残っていることで舌の機能が保存され食事摂取が良好となることがいわれている.また,切除部位の再建を行った例でも舌尖部の可動性を残した場合は咀嚼能が良好であったという報告もある. 3 頭頸部腫瘍 白板症・紅板症白板症は口腔粘膜,特に頬粘膜や舌,歯肉にみられる白い角化性の病変.こすっても剥離しない.紅板症は紅色肥厚症ともいわれ,舌,歯肉,その他の口腔粘膜に発生し,鮮紅色でビロード状,表面が平滑な病変2).舌舌鼻腔鼻腔口腔口唇咽頭円蓋喉頭咽頭鼻部咽頭口部咽頭咽頭喉頭部声帯喉頭口喉頭蓋口蓋扁桃口蓋垂軟口蓋耳管咽頭扁桃頸椎気管食道図1.1-2●咽頭と喉頭22

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