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(2)咽頭癌,喉頭癌(pharyngeal cancer,laryngeal cancer)●病態・症状・治療● 上咽頭癌は扁平上皮癌で,EBウイルスと関連しているといわれている.また,下咽頭癌は扁平上皮癌が多く,梨状陥凹・輪状軟骨後部・咽頭後壁に好発する.飲酒や喫煙との因果関係が深いといわれている.はっきりとした症状が出現しないが,進行すると中耳炎症状や鼻炎の症状が現れる.下咽頭癌では腫瘍が大きくなることで食物の通過障害が起こり,潰瘍がある場合には嚥下時痛が発生する. 治療法としては,放射線療法や化学療法,手術療法がある.下咽頭癌では,進展している場合には咽頭と喉頭の両方を合わせて摘出する必要がある. 喉頭癌は扁平上皮癌で,男性に多くみられる.喫煙による発生リスクは高く,さらに飲酒によって高められるともいわれている.喉頭癌では,その発生部位によって,声門癌・声門上癌・声門下癌の三つに分けられる.最も多いのは声門癌で喉頭癌の60~65%,声門上癌は30~35%を占める.声門下癌の発生は極めてまれである. 喉頭癌では,声門癌は発症早期から嗄声が起こるので早期に発見されるが,声門上癌では発症よりかなり経過してから嗄声や呼吸困難を生じるため発見が遅れる. 喉頭癌の治療法として放射線療法や手術療法,化学療法がある.(3)上顎癌,下顎癌(maxillary cancer,mandibular cancer)●病態・症状・治療● 上顎癌は,主に上顎洞から発生する扁平上皮癌であり,腫瘍が大きくなると上顎洞内にはとどまらず,頭蓋底や咽頭などの周辺組織に浸潤する.症状は,鼻漏や鼻閉,鼻出血,頬部の重苦感や痛みや腫れ,口蓋部の腫れ等がある. 上顎癌の治療法としては手術療法,放射線療法,化学療法があり,三者併用療法を行うことも多い.手術療法では上顎洞開窓術,上顎部分切除術があり,これらの手術では顎骨とともに歯も切除することから切除範囲の大きさが咀嚼機能に影響する.また,創部の瘢痕による開口障害や切除により頬部から眼窩部にかけての形態が変化して鼻咽腔の閉鎖が不完全になり,食物が鼻腔へ漏れることもある. 下顎癌は,下顎歯肉に発生するものと下顎骨に発生するものがあるが,多くは歯肉に発生する歯肉癌である.臨床像は主に乳頭型や潰瘍型がある.症状は腫れや痛み等である. 下顎癌の治療法は手術療法,放射線療法,化学療法であり,手術では下顎骨の部分切除術,辺縁切除術,連続離断術を行う.これらの手術では上顎癌と同様に,顎骨とともに歯も切除することから,切除範囲の大きさが咀嚼機能の程度に影響し,下顎骨の切除範囲が小さいほど食事摂取はよく,半側切除以上になると悪くなるとされている.(1)食道アカラシア(esophageal achalasia)●病態● 詳しい成因は不明だが,食道壁内のアウエルバッハ神経叢の変性や損傷によって食道の蠕動運動が障害され,下部食道括約筋の弛緩不全が生じて食物の通過障害と食道 4 食道疾患 231栄養摂取・消化吸収・排泄機能の障害と疾患

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