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 私たちの身体は,生きている限り「寝ても覚めても」活動を続けている.筋肉を動かして運動している時はもちろんのこと,ぐっすりと寝ている間にも,身体の中では数多くの生体反応が起こり,「生きている状態」を維持している.能動輸送,細胞増殖,神経活動,体温維持,生体成分の合成,最小限の筋緊張などは,意識しなくても行われる生命活動である(図1-1).そのために必要なエネルギーの量を基礎代謝量という. このエネルギーはどのようにして供給されているのだろうか? 答えは,食事中の栄養であり,私たちが日々,食事をするのはこのためである.もっとも,食べたものがすぐにエネルギーに変換されるわけではない.糖質,脂質,タンパク質などが消化され,さまざまな化学反応により分解される過程で,アデノシン三リン酸(ATP)という化合物にエネルギーが蓄えられる.ATPは通貨のようなもので,必要に応じて分解され,エネルギーを放出する.生命活動に必要な生体分子もATPのエネルギーを使って合成される.これら生体物質の分解と合成の一連の化学反応を代謝と呼ぶ. 健康な状態では,代謝はよどみなく流れている.代謝の過程において,数えきれないほど多種類の化学反応の交通整理をしているのが酵素である.一方,代謝の流れが滞ったりバランスが崩れたりすると,体調を崩して病的な状態になる.「偏食はいけない」と言われるのは,必要な栄養素をとれずに代謝のバランスが崩れてしまうからである.また,酵素の働きが十分でなくなって代謝が乱れ,病気につながることもある. 1代謝とは 1代 謝基礎代謝量体温の維持,呼吸や循環機能,中枢神経機能,筋緊張など生命活動の維持に最低限,必要なエネルギーのことをいう.10代後半をピークに年齢とともに低下していく.アデノシン三リン酸(ATP)電子伝達系(p.14)などで生じたエネルギーを分子中に蓄える.リン酸を一つ切り離すことでエネルギーが放出される.糖質,脂質タンパク質の分解能動輸送細胞へのイオン,分子の出入り神経活動生体成分合成肝臓体温の維持筋肉の運動細胞増殖能動輸送細胞増殖神経活動体温の維持生体成分合成筋肉の運動 糖質,脂質タンパク質の分解消化・吸収の働き 栄養素を分解してATPという形でエネルギーを取り出し,これをさまざまな生命活動に利用している.ATPATP図1-1●エネルギーと生命活動12

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