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糖質,脂質,タンパク質などの生体物質は,体内では常に合成され,かつ分解されている.総量が見かけ上,変化がないようにみえる時でも,古いものが分解され,新しいものに置きかえられているのである.この現象を代謝回転という.じっとしていても,われわれの身体は日々作りかえられている.生きている生命体には代謝回転がみられるが,死んだ生命体にはみられない.代謝回転こそ生ける証あかしということもできる. 体内では異化と同化はおおむねバランスがとれているが,代謝反応速度は決して一定であり続けるわけではない.個体のおかれている環境の変化に応じ,適切な調節を受けている.運動をしている時には筋肉を動かすために異化が盛んになる.一方,睡眠時には同化が盛んになる(図1-4).長期間にわたって同化が優勢になれば肥満につながり,異化が過剰になるとやせてしまう(図1-5).このような代謝の調節は組織ごとに行われているのではなく,一つの個体の中で各組織の働きが協調するように行われている.この調節に中心的な役割を果たしているのがホルモンである. 2代謝とその制御1日24時間の中で同化と異化は大体バランスがとれているが,時間帯によりどちらか一方が盛んなこともある.夜12時異化同化異化同化昼12時朝6時夕方6時図1-4●1日の生活と同化・異化のバランス筋肉増強剤スポーツ選手が禁止薬物の使用により,メダルを剥奪されたり,記録を取り消されたりすることがある.筋肉増強剤も禁止薬物の一つであり,実体はアナボリックステロイドというタンパク質同化作用を促すホルモンである.タンパク質の異化と同化のバランスを変えることにより,筋肉量を効率よく増やす働きがある.副作用も多く,使用は危険とされる.151代謝総論
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