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(1)臨床栄養学とは 実験や地域の調査によって得られた栄養学の基礎的なデータを,実際に人を対象として用い,食物を通して人の健康に直接寄与する学問が臨床栄養学である.生活習慣病が生涯を通して大きな健康問題となっている日本においては,食習慣の改善は重要な課題である.さらに,超高齢社会を迎えた現代においては,新たに高齢者の低栄養が問題になっている.臨床栄養学は,栄養を通して疾病の予防や改善,生活の質の向上に寄与する学問であり,今後ますますその重要性は増すと考えられる. 臨床栄養学を用いた栄養ケアのマネジメントは,①栄養を評価する,②健康な栄養状態を維持・増進する,③栄養を改善して疾患を治癒させる,重症化を予防する,という過程で行なわれる.看護者は,看護の対象となる人の健康状態を把握し,その健康レベルに合わせて,健康生活の維持・増進や,健康障害からの回復の援助を行う.援助の中には,当然,栄養に関する指導やマネジメントも含まれる.また,人にとって栄養を摂取するという行為は,それだけが独立したものではなく,社会経済的背景や自然・生活環境,人間関係など生活そのものと密接に関係している.さらに,食事を摂取できる機能,消化・吸収の機能,代謝機能,排泄機能などにおいて,個人が抱える健康障害との関連も深い.すなわち臨床栄養学は,治療の上でも,生活する人を援助する上でも,看護者にとって必要不可欠な知識である. 摂取エネルギーや栄養素が不足しないような食事のとり方を目指していた時代から,豊富な食物の中から適切なエネルギー量や栄養素の摂り方を選ぶ時代へと変化し,人々の「食」を通しての健康増進意欲は高まるばかりである.このような飽食の時代において,看護者には正しい臨床栄養学の知識をもち,個々人の生活や健康状態に合った食生活の援助方法を見極め,実践できる能力が求められている.(2)臨床栄養学の看護への活用 看護者が臨床栄養学の知見を看護ケアに生かすためには,まず基礎となる知識が必要である.それは,各栄養素の役割,代謝の過程,栄養アセスメント,食品の成分構成,食事摂取基準などである.このような基礎となる知識をもつことで,健康的な栄養状態からの逸脱の有無,また逸脱の原因や理由を判断することができる.次に,健康な日常生活における栄養状態についての知識が必要である.食文化の変化や,スポーツをするときの栄養補給,そして人の成長各期における望ましい栄養摂取の基準などである.特に高齢化が進む現状においては,高齢者の栄養状態に対する理解が重要となる.これらを的確にとらえることによって,望ましい食生活への援助や,異常の早期発見が可能になる. 健康状態を逸脱している人に対する栄養食事療法は,治療そのものであり,その必要性や根拠について理解しておかなければならない.根拠を理解することによって,食事や栄養がどのようにコントロールされているかを理解し,その管理も可能になるからである.このように,看護者は対象者がどのような健康状態にあっても,QOL(生活の質)を高める上で臨床栄養学の知識を活用することを求められている.1臨床栄養学の意義と看護10

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