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 臨床栄養学はいかに人々の栄養状態を改善するかに始まり,飽食の時代を迎えると生活習慣病の予防・改善に貢献してきた.さらに,超高齢社会が到来した日本は,健康長寿社会を目指しており,また新たな臨床栄養学の知識が必要とされている.臨床栄養学は,時代のニーズが変わっても,人々の生活の質を高めるために欠くことのできない学問である. 人々の健康を支援する専門職は,いつの時代にあっても適用可能な基礎知識を身に付け,そこから根拠を持って適切に看護を実践できる能力が求められる.そのため,臨床で実践する場合に不可欠となる基礎知識については,学習を避けるわけにいかない.本書では「臨床栄養学の基礎知識」として第1章にまとめ,図表を多く用い,わかりやすく学べるように工夫した.第2章では,2020年に改定された「日本人の食事摂取基準(2020年版)」について取り上げた.第3章以降は,対象者の健康の段階に合わせて,栄養学の基礎知識を踏まえ,実際の対象者にどのように適用していくのかをより具体的に述べた.健康の維持増進に関わる内容を第3章「日常生活と栄養」に,健康障害の治療に関わる内容を第4章「療養生活と栄養」,第5章「疾患別の栄養食事療法」にまとめた.第6章では,「栄養食事指導の実際」について説明した.また,全章にわたって,今後ますます必要となる高齢者に対する栄養について,特に説明を加えた. 臨床栄養学に必要な知識がもれることのないようテキストを構成し,学生が知識を積み上げ,統合しながら学べるように,学習段階に沿って項目を配置するように工夫した.さらに,本文の用語説明や関連事項を補足するplusαや動画を有効に配置し,本書だけで十分理解が得られるように充実させた. 本書では,各章の学習項目ごとに,該当分野の専門家に執筆を担当してもらうことにより,最新の臨床栄養学の中から学生にとって必要な内容を精選し,理解しやすい記述で説明することができたと考えている.本書で学習する主な対象は看護学生であるが,看護以外の医療従事者を目指す学生にも十分に役立てていただけるものと思う.広く,臨床栄養学を学ぶ人にとってのテキストとして利用されることを願うものである. 終わりに,本書の執筆にあたりご助言およびご協力をいただいた方々に深く感謝いたします.京都府立医科大学医学部看護学科教授關戸 啓子はじめに

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