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 人間は極めて複雑かつ統合された多細胞生物である.人間が生命体として生きていくためには,多くの生理的・生化学的なプロセスが正しく機能する必要がある. 細胞は生命体として機能する最小の単位である.生物はその生命活動を営むために,外界との境界をもって内部環境を維持していく必要がある.一方で,内部環境を維持しながらも,外界とのさまざまな物質交換を行っていくことが必要となる.生命維持に必要な酸素や栄養源を外部から取り込み,不用になった物質は外界へ排泄されなければならない. 人間は約60兆個の細胞からなり,体表にある細胞もあれば骨の中に埋まっている細胞もある.人間を構成する一つひとつの細胞を取り出してみると,おのおのが生命体としての条件を兼ね備えている.細胞が複雑な統合体になったときには,生きていくために必要な機能をそれぞれの細胞が分担して果たす.これを細胞の機能分化と呼ぶ. 機能の分化に合わせ,細胞の構造も特殊化する.同じような機能や構造をもちグループ化した細胞群を組織といい,いくつかの異なる組織で器官が構成されている.さらに,その上位には器官系と呼ばれる,いくつかの器官と組織から構成される単位がある(図1-1). おのおのの器官系は身体生存に必要な機能を分担しているが,それらだけで生存することはできない.器官系同士が協調し協同作用をすることで,個々の細胞にとって最適な環境が整い,その結果,身体全体の環境も整うことになる.序論人間の身体における本来の働きとその乱れ 1身体の基本単位細 胞組 織器 官器官系個 体図1-1●身体を構成する基本単位12

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