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 本書のタイトルは『病態生理学』としました.これまでは病理学として扱われていた範囲と,疾病論の中の症状や徴候にあった内容を一つにまとめたものです.これらは従来,別々の領域にあったものですが,なぜ身体に不調が起こるのかその原因を考え,原因別にみるとどのような整理ができるのかを考え,それらが実際の患者さんには具体的にどのように現れるのかと考えると,決して別々のものではなく,むしろとても関連が深いものであると思われます. 医学教育で使用される教科書における病理学は,主に顕微鏡によって,身体の不調を細胞レベルのメカニズムで整理分類するものです.したがって,多くの記述が顕微鏡解剖学,すなわち組織学の知識体系と結びついています. しかし看護実践でより大切なのは,機能別に人間を見,その機能の不調がなぜ起こり,どのように現れるかを理解することではないかと考えます.つまり,病態生理的なとらえ方が,看護実践にはより有効であると思っています. この「ナーシング・グラフィカ」シリーズではそのような考え方から,従来,別々の分野とされていた解剖学と生理学とを一体化させ,『解剖生理学』としています.この考え方は,米国ではすでに常識として定着しています. そこで本書『病態生理学』では,従来の病理学の中で疾病の起こるメカニズム別(病因別)に分類整理した「病理病態論」をまず学習し,次にその不調がどのように現れるかという実践的なとらえ方ができるように,よく遭遇し,かつ重要な症状・徴候について「病態症候論」として整理しました.これら一連の学習を終えたならば,眼前の患者さんの話していることや私たちが観察できたことから,その患者さんに起こっている変化が,根本から理解できるようになるはずです. より実際の臨床場面に即した学習が可能となるよう大胆な再構築をした本書は,実習が進むにつれ,また実際の臨床活動を進めるにつれ,その効果が現れてくるものと思っています.さあ,学習という冒険に乗り出しましょう.名古屋大学大学院医学系研究科教授山内豊明はじめに

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