医療は,診断に続いて,治療方法の選択へと進む.治療方法には外科的手術,放射線治療などさまざまあるが,患者が受ける治療として最も多いのは,医薬品を用いた薬物治療である. 一般に,体内への吸収を目的として経口で摂取するのは,食品と医薬品の2種類である.食品は,日常の食事や嗜好品として摂取される一般食品以外に,いわゆる健康食品と呼ばれている,次の3種類の食品がある.自らの判断で,これらの健康食品を摂取している患者は少なくない.①特定保健用食品:臨床試験データを提出して申請を行う.個々の製品ごとに消費者庁長官の許可を受けることにより,保健の効果(許可表示内容)を表示することができる食品.「トクホ」とも呼ばれている.②栄養機能食品:「特定保健用食品」とは異なり,個別に消費者庁長官の許可を受けている食品ではなく,国が定めた栄養成分の規格基準に一つでも適合していれば製造業者等が各々の責任で栄養機能食品と表示し,その栄養成分の機能を表示することができる.対象となる栄養成分は,脂肪酸(n-3系脂肪酸),ビタミン13種(ビタミンB1,ビタミンB2,ビタミンB6,ビタミンB12,ビタミンC,ナイアシン,ビオチン,パントテン酸,葉酸,ビタミンA,ビタミンD,ビタミンE,ビタミンK)と, 1医薬品 1医薬品を理解するために➡p.256 資料1も参照.Keyword・医薬品 ・特定保健用食品・栄養機能食品 ・機能性表示食品・医療用医薬品 ・一般用医薬品・医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律・日本薬局方 ・毒薬 ・劇薬・麻薬 ・一般名 ・商品名・医薬品リスク管理計画(RMP)・薬理作用 ・受容体・作用薬(刺激薬) ・拮抗薬(遮断薬)・薬物動態・吸収・分布・代謝・排泄(ADME) ・副作用・薬物有害反応(ADR) ・相互作用・薬物依存・薬物耐性 ・薬物中毒・医薬品添付文書 ・配合変化・患者安全管理Key Sentence●医薬品は生体に対してなんらかの作用を有し,その作用によって疾病の治療あるいは予防に役立たせるための化学物質で,人間の健康維持のために用いられる.●医薬品は,法規,薬効,治療目的などにより,さまざまな分類がある.●医薬品が,細胞膜に局在する特異タンパク分子(受容体)に結合すると,その刺激(情報)が細胞内部の物質(セカンドメッセンジャー)の量的な変化を起こす.つまり,受容体は外からの言葉(情報)を細胞内部の言葉(情報)に翻訳し,セカンドメッセンジャーによって,細胞内での活動が開始される.●医薬品には,使用目的の薬理作用(主作用)がある.それ以外の作用は,すべて副作用ということになる.副作用のうち,好ましくないものは薬物有害反応(ADR)と呼ばれる.●薬物療法を安全に行うためには,①rightpatient,②rightdrug,③rightdose(rightrate),④righttime,⑤rightroute,⑥rightpurposeの6Rightsを確認する.この6Rightsのどれが欠けても,患者になんらかの健康被害が発生する可能性がある.●医薬品は,投与すればそれで終わりではない.患者が正しく医薬品を服用しているか,あるいは,薬物有害反応や薬物相互作用が発現していないかを継続して観察(経過観察)する必要がある.患者からの異常の訴えには,先入観を除いて耳を傾けるべきである.12
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