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 看護を学ぶ学生の皆さんにとって,薬理学のイメージは,「難しそう」なものであり,「覚えることが多そう」なものであるらしい.たしかに,薬の名前は,一般名だけでなく,代表的な商品名も知っておく必要があり,すべて覚えようと思ったら気が遠くなるような量である.また,薬の作用メカニズムを理解しようとすると,分子レベルの話になり,関連領域の知識が必要となる.それに加えて,「臨床薬理学」では,疾患に関する理解がなければ,治療に用いる薬を理解することができない.これらのことを考えると,学生の皆さんの薬理学に対するイメージは,十分に納得できる. しかし,疾患の治療において,薬は重要な位置を占めている.誰もが,これまでになんらかの理由で薬のお世話になった経験があるはずである.そのような身近なものである薬を,どのように勉強すると理解しやすいかという議論を行うことから,本書の企画は始まった. 薬を理解する最もよい方法は,疾患の原因を理解することである.つまり,疾患の原因を除去するために薬は使用されるということを考えながら学習を進めると,薬について理解を深めることが可能になる.また薬は身近なものであるという認識に立ち,本書では,これまでの薬理学の教科書とは異なる形式を試みた.具体的には,以下の通りである.①身近な疾患(生活習慣病,消化器系疾患など),あるいは重要と思われる疾患(がん,感染症など)に焦点を当て,その他の疾患との間にメリハリを付けた.②薬物療法における患者の安全確保を意識した記述とした.特に,看護における注意点を重視した構成とした.③薬の解説部分は,文章を連ねずに,表形式を取り入れ,見やすいレイアウトにした.④本文に関連した事項を「plusα」として,できるだけ多くの事柄を記載した.⑤継続して最新情報を入手できるように,更新体制が整っているホームページのURLを可能な限り掲載した.⑥看護師として必要な計算練習の項目や,重篤な薬物有害反応の自覚症状などの項目を巻末資料として加えた. この結果,本書はデータ集のような一面も認められるが,本書で学ぶ学生の皆さんのことを考えて,あえて新しい教科書スタイルへの挑戦という道を選択した. もちろん,臨床の場で働く看護師の皆さんにも,「難しそう」な薬理学の理解はじめに

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