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(1)真核生物と原核生物の基本構造(図1-1,表1-1) 日常生活では,有害な微生物として「バイキン」の用語が汎用される.これは,真菌(カビ)を示す「黴ばい」と,細菌を示す「菌きん」の両方を含んだ一般用語である.真菌も細菌も,微生物の仲間であるが,それらは生物学的には異なった細胞構造をもっている.●真核細胞と原核細胞の基本構造● 真菌の細胞では,遺伝子DNAを含む染色体(相同染色体,すなわち二倍体)は,核膜で覆われた核内に複数本に分かれて存在し,その周りには細胞質があり,外周を細胞質膜が取り囲んでいる.このような構造をもつ細胞を真核細胞という. 一方,細菌の細胞では,核膜はなく,環状の遺伝子DNAである染色体(一倍体)1個が細胞質内に存在し,その周りを細胞質膜が取り囲んでいる.最外層に硬い細胞壁がある.このような細胞を原核細胞と呼ぶ. いずれの細胞も細胞質内にはRNAやリボソーム粒子をもち,独自のタンパク質合成を行って代謝・増殖している.真核細胞には,ミトコンドリア,小胞体,ゴルジ体などの小器官や細胞骨格がみられるが,原核細胞はそれらをもたない. なお,真菌のほか,植物やヒトを含む動物も真核細胞から成る真核生物に分類される.真菌や植物細胞にも細胞壁はあるが,その成分は細菌のものとは異なっている.●本書における微生物と医動物の区分け● 本書では,病原体として,原核生物である単細胞の細菌(一般の細菌のほか,マイコプラズマ,リケッチア,クラミジアを含む),および,真核生物である単細胞の真 1臨床微生物・医動物の特徴一倍体,二倍体細菌(原核細胞)および減数分裂した真核細胞の染色体は一倍体.真核細胞の染色体は,父方,母方由来の相同染色体からなるので二倍体.相同染色体の組数は複数個で,生物種により決まっている.細菌の形球状の球菌,細長い形をした桿かん菌,らせん状のらせん菌がある(p.218参照).カプシドエンベロープ (+/-)細胞質膜核酸染色体細胞壁ミトコンドリア核染色体リボソーム核膜細胞質ゴルジ体小胞体細胞質膜リボソーム真核細胞原核細胞ウイルスミトコンドリアと原核細胞(細菌)には類似性がある. (例えば, 正二十面体 構造)図1-1●真核細胞,原核細胞,ウイルスの基本構造24

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