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認が可能な寄生蠕虫(例えば,線虫類1mm~1cm,条虫類1m以上),節足動物(例えば,ヒゼンダニ0.5mm程度),光学顕微鏡(解像度0.2μm)で観察可能な原虫(例えば,マラリア原虫10μm程度),真菌(例えば,カンジダ10μm程度)や一般の細菌(球菌1μm程度,桿菌数μm程度,らせん菌十数μm程度),マイコプラズマ,リケッチア,クラミジア(100~数百nm)がある.ウイルス(20~300nm)は,電子顕微鏡(解像度3nm)でなければ観察できない.それぞれの内部微細構造の観察には,電子顕微鏡が用いられる.(5)臨床微生物・医動物の増殖のしかたの違いと病原性(表1-1)●真核生物● 真核生物は,単細胞,多細胞にかかわらず無性生殖,有性生殖を含んだ複雑な増殖様式をとる.特定の環境で固有の生活環をもつ節足動物・寄生蠕虫・原虫は,その生活環の一部が宿主の体内(皮膚,消化管,赤血球など)で営まれることで,特有の症状を現す. もともと高湿度,貧栄養の環境中に生息している真菌は,菌きん糸しや胞ほう子しを産生して増える.好気的条件で人工培地でも培養可能である.通常,健常者には感染しにくく,感染抵抗力が低下した宿主に感染する(日和見感染という.p.146参照)と,粘膜,皮膚,肺などに炎症を起こす.●原核生物● 原核細胞は,単純な二分裂で増える.限られた栄養素を含む人工培地でも培養可能な細菌,マイコプラズマ,一部の代謝を宿主の細胞成分に依存するため,細胞内でのみ増殖できるリケッチア,クラミジアがある. 細菌にはさまざまな種類があり,栄養要求性の高いものは体液中や臓器内で,低いものは粘膜表面・皮膚表面などでも生育が可能である.酸素が必須のもの(好気性細菌),酸素があると増殖できないもの(嫌気性細菌),酸素があってもなくても増殖できるもの(通性嫌気性細菌)があり,それぞれに適した部位に定着して分裂・増殖する. 1個の細菌が分裂に要する時間(世代時間)は,例えば,大腸菌や黄色ブドウ球菌などの多くの細菌では20~30分であるが,腸炎ビブリオやウェルシュ菌などのある種の食中毒起因菌では,食品中の至適条件下においては5~8分である.これは,1個の細菌が数時間で100万個以上に増えることを意味する.身体内では,宿主の防御機構と競合しながら増殖するため,培地上と比べ世代時間が長くなることを考慮しても,短時間での発症につながりうることが想像できる(潜伏期が短い).生活環生物が成長し,生殖に伴う変化が一通り出現する一周期の過程.肉 眼光学顕微鏡電子顕微鏡原核生物(多細胞)真核生物(単細胞)真核生物1m寄生蠕虫節足動物10cm10μm100μm原虫真菌細菌1μm10nm100nmウイルスプリオン感染性粒子タンパク質1nm1cm1mm図1-2●臨床微生物・医動物の種類と大きさ●微生物の大きさ〈動画〉26

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