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 看護とは何か.この問いに答えるため,看護師は長い間,研究と論議を重ねてきた.看護が専門職として社会的責任を果たすためには,看護の本質を探究し,看護の目的や役割,機能を明らかにすることが重要だからである.(1)看護,ケア,ケアリング 看護は,「看(みる)」と「護(まもる)」を合成した語であることから,一般に「見守る」または「看取る」といった意味に解釈されている.また,英語では看護にあたるnursingの語源がnourish(育て養う)であることから,看護には他者を見守ったり保護することで,その人の成長や発達(その人のもつ可能性の達成),そして生活(健康に生きていくこと,平和に死ぬこと)に関与するという意味が含まれているといえる. 英語ではまた,看護をnursing careとも呼ぶ.ケアという概念は,在宅ケア,ターミナルケアあるいは心のケアなど保健医療福祉の分野で多く用いられているが,哲学や教育学の分野においても,その本質が論じられてきた 1).ケアとは世話,配慮,気遣いといった意味であり,する者とされる者との相互作用のなかに生じる行為である.ケアは看護の特性を示すものとして,医学的側面を示すキュア(cure:治療)としばしば対比される. 看護の仕事は,看護師が自分を道具として(自分を使って)対象に働きかける行為である.ゆえに必然的にケアを内包していると考えられるところから,ケアは看護の中心概念として用いられてきた.近年,ケアリングを中心概念とする看護理論が発表されている(レイニンガー,ワトソン) 2,3). ワトソン(Watson, J.)はケアとケアリングを区別し,ケアは看護の具体的行為であり,ケアリングは態度(心の姿勢)であると述べている 4).つまり,ケアリングとは対象のニーズに応えるだけでなく,対象の立場に立って,ある行為が対象のためになるかどうか(対象の生命や生活の質を高めたり,成長につながるか)まで判断するという,看護の特性を顕著に表す概念といえる.(2)看護が行うこと では,看護は何を行うのか. 看護は社会における重要な機能の一つであり,その役割は社会のニーズに伴って変化してきた.国内外の看護専門職団体による看護の定義から,看護に求められている役割,機能を概観してみよう(表1-1).●看護の定義とその特性●①看護の対象は人間であり,新生児(胎児を含む)から高齢者まで,あらゆるライフステージの人々およびあらゆる健康レベル(死にゆく人々を含む)の人々を含む.②看護は個人,家族および彼らが所属するコミュニティという単位の人間を対象とする. 1看護のねらい 1看護とは→ワトソンについてはp.120を参照.18

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