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●医療に対する意識● 近年,国民の医療に対する期待や権利意識,医療安全に関する意識が高まっている.また,医師・看護職をはじめとした医療・福祉専門職に対するニーズや要望も,自己の生き方に沿った生活の実現や精神的な豊かさを重視する人々の増加に伴い,多様化してきた.在宅ケアにおいても,どのような療養生活を送りたいか,そのためにどの医療・福祉サービスを選択し,それらをどのように活用していくのか,療養者や家族が主体性を発揮できるよう,その意向や意思決定を前提としたケアが,専門職の基本的な姿勢として求められる. 「人生の最終段階における医療に関する意識調査」(厚生労働省)によれば,医療・介護職以外の一般国民では,末期がんの状態で最期の医療・療養を受けたい場所として自宅を挙げた者は,2013(平成25)年は37.4%,2017(平成29)年では47.4%と上昇している.また,最期を迎えたい場所として自宅を挙げた者は69.2%であった(図1.1-3).しかし,日本は諸外国と比較し,実際に自宅で亡くなる者の割合が低い(図1.1-4).一般国民が最期を迎える場を考える際に重要なことは,家族等の負担にならないこと,体や心の苦痛なく過ごせること,経済的な負担が少ないことなどが上位であった(図1.1-5). これらを受け,厚生労働省は2018(平成30)年に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を提示し,医療従事者からの適切な情報提供と説明,ならびにそれに基づいて医療・ケアを受ける本人が多専門職種の医療・介護従事者から構成される医療・ケアチームと十分な話し合いを行い,本人の意思決定の尊重を強調している.(3)疾病構造の変化●日常生活に支障のある高齢者・要介護者の増加● 平均寿命と健康寿命のギャップは,日常生活や健康面で何らかの支障を抱えながら過ごす期間がどのくらいあるかを示している. 2016(平成28)年の健康寿命は男性72.14年,女性74.79年であり,2001(平成13)年より男性は2.74年,女性は2.14年延伸している.同期間における平均寿命は男性で2.91年,女性で2.21年延びたことから,健康寿命の延びは平均寿命のそれよりも小さい(図1.1-6). 2016年における65歳以上の有訴者率は446.0(人口千対)であり,およそ半数近くの高齢者が何らかの自覚症状を訴えている(図1.1-7).同様に,日常生活に影響のある者の率(人口千人当たりの「現在,健康上の問題で,日常生活動作,外出,仕事,家事,学業,運動等に影響のある者」の数)は,2016年では246.6,つまり高齢者のおよそ4分の1が日常生活に何らかの支障を抱えている状況がある. 第1号被保険者(65歳以上)の要介護者等認定者数は2015年度末で606万8千人であり,2004年度末から212万5千人増加している(➡p.131図4.4-6参照).75歳以上では,2014年度末で被保険者のうち9.0%が要支援,約23.5%が要介護の認定を受けている. 要支援・要介護状態になった主な原因を要介護度別にみると,要支援者では「関節疾患」が17.2%で最も多く,次いで「高齢による衰弱」が16.2%となっている.要介護者平均寿命と健康寿命平均寿命とは,0歳児の平均余命を指す.健康寿命とは,心身ともに自立した状態でいる期間を示す.14

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