れる共通性から理解するとともに,個人差があることを十分に考慮する必要がある.マルカム・ノールズ.成人教育の現代的実践:ペダゴジーからアンドラゴジーへ.堀薫夫,三輪建二監訳.鳳書房,2002,p.16.からへ 1.依存性 2.受動性 3.主観性 4.無知 5.小さな能力 6.少しの責任 7.狭い関心 8.利己性 9.自己拒否10.あいまいな自己アイデンティティ11.個別への焦点化12.表面的な関心13.模倣14.確かさへのニーズ15.衝動自律性能動性客観性知識獲得大きな能力多くの責任広い関心利他性自己受容統合された自己アイデンティティ原理への焦点化深い関心独創性あいまいさへの寛容理性これらの次元は,成長の方向を示しており,達成されるべき完全な状態を示しているのではない.図1-1●成熟の諸次元 大人とは,十分に成長し,一人前になった人とされ,心身ともに成熟し,職業をもつ,配偶者をもつなど社会人として自立および自律した生活ができ,社会的にも認められた人をいう.子どもから大人に移行する場合,依存から自立へとその立場を異にするため,心理的な危機を伴いやすい.人生における重要な節目には,儀礼を設け節目の意味を個人が自覚するのを促すと同時に,社会もそのことを認識する機会を設けている.人生の転機を無事に通過するために設けられた儀式を通過儀礼といい,時代や民族,宗教を超えて広く継承され,危機回避に応用されてきた 4). 成人式は,満20歳になった男女が新たに成人の仲間入りをし,社会の一員となっていく過程を祝う通過儀礼である.これは,昔の武家社会で男子の成人を祝う「元げん服ぷく」の儀式に当たり,15歳で子どものころの髪型や服装を大人のものに改めたことに由来している.また,女子では平安時代,13歳前後の女子が成人して初めて裳もを着ける「裳も着ぎ」という儀式がこれに当たる.通過儀礼は本来,象徴的なイベントや儀式を行うことによって,個人が新しい社会のメンバーになったことへの自覚を促し,社会は新たなメンバーの参加を承認する役割をもっていた.しかし,現在の成人式では通過儀礼の意味が薄れ,子どもから大人になったという自覚を促す機会とはなりにくく,子どもと大人の境界線は不明確になっている. フィリップ・アリエス(Aries,P.)は,労働という視点から子どもと大人を区分し,子ども時代が生まれたのは17世紀であるとしている 5).それ以前の時代では,大人であることが「働き手」であることを意味し,労働力を提供できれば大人とみなされ,2「成人」であることの自覚通過儀礼人の一生で,重要な節目に行われる儀式.また,社会生活において,特定の集団に加入する際や社会的認知のために行われる儀式.イニシエーション.オランダの人類学者ファン・ヘネップは,通過儀礼の段階を,分離,移行,統合の三つに分類している.171成人であるということ
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