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社会の一員とされていた.その後は大人になるために必要な知識と技術を合理的に教える機関として学校ができ,それに伴って労働に参加させる年齢が引き上げられた.労働から解放された幼い年齢層が「子ども時代」を形成し,大人になるために習得しなければならない知識や技術が増加する中で,学業の期間は徐々に長くなり,子どもから大人に移行する期間が長くなっている. 日本では通常,生産活動ができる年齢を15歳以上65歳未満とし,この年齢を生産年齢としている.しかし,高学歴化が進んだ社会では,成人式を過ぎても労働を猶ゆう予よされる時間をもつことができ,経済的に自立するまでに時間がかかり,いつまでも親元にとどまるという光景も珍しくなくなってきている.また,「自分はなにものか」をうまく見つけられずにいる若者,定職をもたない,いわゆるフリーターやニート,自宅へのひきこもりなど,不適応を起こす者の増加もみられる.親元にいる独身成人を「パラサイトシングル」と問題視する風潮もあり,成人年齢であるが自立できない,一人前になれない若者の存在が注目されている. このように,現在では価値観が多様化し,身近に手本となる大人の存在が少ないことや,フリーターのような非定職者の増加が示すように職業選択が困難な時代的背景もあり,大人として自立するまでに多くの時間を要している.さらに,成人式が現代社会でリアリティをもち得なくなっているのは,「大人になる」という意味が見えにくくなっていることにも起因していると考えられる. しかし,多くの成人は,自分が他者に好ましい存在であると確信がもてる,身近な人との関係が良好である,男女の結びつきにより新たな関係や家庭を築く,職業生活や社会的活動などにより社会における自分の役割を果たすことができる,などの社会的活動を通して自立していき,自律した人間として自分らしさを見いだしている.ニート(NEET)Not in Employment, Education or Trainingの略語.若年無業者のことで,15~34歳までの就業,就学,家事もせず,職業訓練を受けていない非労働者.その数は53万人(2018年平均)となっており,対策の拠点として「地域若者サポートステーション」が地方公共団体との協働により設置されている.パラサイトシングル親と同居し,経済的援助を受けたり,日常生活の世話を親に依存したりする未婚者を指す.パラサイト(parasite)は,寄生動(植)物,居候の意味.(1)成長と発達 人間の成長と発達については,その意味を明確に区別しないで用いることも多い.成長は,一般に生まれてから育つ過程での,身長や体重,そのほか身体の量的な増大をいい,発育とほぼ同義の言葉として使われる.これに対して発達は,生物,事物,事象が低次の段階から高次の段階へと向かう質的変化を表し,機能や能力の向上を指す.子ども時代は,身体的な成長に伴って質的にも発達し,より高いレベルへと変化していく.一般的に,一定の年齢に達すると身体的成長は止まるもののその状態を維持し,知的作業や情緒的機能は衰退するとされていた.しかし,実際は必ずしもそうではなく,人間の精神的な質的変化は継続し,発達は生涯にわたっていることが知られるようになった.また,人間の発達の過程は,多くの要因によりかなり幅のある経過をたどることも明らかにされている. 生涯の発達に影響を与える要因として,バルテス(Baltes, P.B.)は次の三つを挙げ3「成人看護学」分野で用いられている成人の特徴の概要1人間の成長発達と成人期18

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