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 成人看護学では,「成人とは何か」を明確に打ち出す方針のもとに,既存のテキストとは一味違う看護学の教科書を目指した.編集担当の3人で白熱した話し合いを何度ももち,生活者としての,大人としての成人の特徴について検討した.私たちは,従来の教科書では成人をあたかも人間一般として扱い,必ずしも成人の特徴を踏まえたものになっていないと考えた.そのため人間一般の典型としてというより,母性や小児,老年と同様,成人という対象を明らかにし,対象に応じた看護を展開する必要があると考えた.そこで,成人・母性・小児・老年を同列に並べ,その上で成人看護学を『成人看護学概論』『健康危機状況/セルフケアの再獲得』『セルフマネジメント』で構成した. 本書『成人看護学概論』は,成人は成人(大人)としての役割を担っていることに焦点を当て,第1部では,成人の成長発達の特徴について役割や健康問題などを解説した上で,身体機能の特徴をもとに従来の部位別看護,臓器別看護,系統別看護の考え方を整理し,さらに生活行動と関連させ身体機能を理解する看護学独自の見方について解説した.生活者としての成人を理解する視点を示し,従来の医学モデルとは一味違う看護モデルで成人の生活をアセスメントするためのガイドを提示できたのではないかと考えている.また成人は,その活動性の多様さから価値観も多様であることに言及し,病気のアンチテーゼとしての見方だけではない健康観の多様さに応じた看護の考え方を解説した.この点も,従来の医学モデルにはない,健康観の転換を示すことができたのではないかと自負している. 次に,成人の学習者としての特徴を踏まえた健康教育や患者教育を提供するために,大人の学びについて解説した.子どもの学習を援助する科学としての教育学(ペダゴジー)ではなく,大人の学習者の学習を援助する科学としての成人教育学(アンドラゴジー)を学ぶことで,効果的な健康教育や患者教育を行う基盤をつくることができると考えている. 第2部では,今回の改訂で構成を再検討し,成人期にみられる健康障害を,成人の生活に焦点を当てて,「生活習慣」「ワーク・ライフ・バランス」「セクシュアリティとジェンダー」「更年期」の四つに分けて解説した.最後に第3部では,成人への看護に有用な七つの概念,「病みの軌跡」「セルフケア」「ストレス」「危はじめに

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