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を果たす時期と考えることができる.それゆえ,高齢者をみるときには,衰退イメージを抱くことなくとらえる必要があることから,加齢変化を生じていく人々という言葉を使いたい. 一般的に,老化には,①普遍性(universality):誰にでも起こってくるもの②内在性(intrinsicality):その原因が主として内因性であること③進行性(progressiveness):進行して起こるもの④有害性(deleteriousness):個体の生存に対し有害的に起こってくるものという四つの特徴があるとされている.老化に関してはいくつかの学説があり,遺伝子によって制御されているとするプログラム学説や酸化ストレス説,フリーラジカル説などが報告されている(➡p.176参照).近年はこのような老化の考え方に対して,基礎老化研究の分野で,抗加齢(アンチエイジング)の目覚ましい研究報告が発表されている. しかしながら,老化については,一元的に説明できるものではなく,遺伝素因と環境要因によって決定されると考えられている.私たち人間は,遺伝的素因をもって生まれてくるが,その後の生き方,ストレス,社会生活を送る場所,人間関係など,さまざまに影響する環境要因が大きいということになる.高齢者にとっての抗老化の考え方は,まずは病気にならないというヘルスプロモーションの考え方を基盤とし,成人期からの生活歴が大きく影響していることを踏まえ,生活習慣病予防を心掛けることにあるといえる. 高齢者の健康状態をみるときに,それが生理的老化(physiological aging)によって起こっている変化なのか,病的老化(pathological aging)なのかの判断が必要とされる.生理的老化とは,年を重ねることによって生理的な機能低下が起こってくる状態をいい,病的老化とは,病気などによって機能低下の程度が著しく大きくなった状態をいう.高齢者の健康状態をアセスメントするとき,もともとの生理的な機能低下があるために,起こっている機能の低下状態が病気によるものかどうかを見極めることが困難であり,高齢になるとすべての機能が低下するものととらえてしまうことがある.しかし,機能の変化を「年のせい」と考えてしまうと病気を見逃すことになるので,気を付けなければならない. 人口に占める高齢者の割合が増加することによって,人口の高齢化が起こる.そもそも,人々が長寿を達成し,生活が保障されることは誇りたいことであり,幸せなことである.ただ,高齢社会が急激にやってきたために,人口の高齢化を予測できたにもかかわらず,施策などの対応が追いつかず,さまざまな問題が生じている.この高齢化の問題は,少子化の問題と相まって,日本全体の将来構想の課題となっている. 日本では,第二次世界大戦後の第一次ベビーブームと,その子どもたち世代である1970年代前半の第二次ベビーブームのころに,突出して人口が多くなっている (図1.1-1).これらの人々が高齢者になるときには,人口比率に大きな影響を与える➡ヘルスプロモーションについては,5章p.257参照. 3人口の高齢化少子高齢化第二次ベビーブーム後に,第三次ベビーブームは起こっていない.それは,ちょうど第二次ベビーブーム世代が出産年齢(適齢期)になるころにバブルが弾け,経済状況が悪化する中で非正規雇用者が増えたこと,そして,女性の社会進出が増えてきたこと,また,高齢者の増加が課題となり,介護の課題が注視され,子どもを産み育てることへの支援がおろそかにされるという社会状況によるといえる.このことは,昨今の少子高齢化の問題にもつながっている.131高齢者の理解

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