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 人間の健康を考えるときに基準として用いられるものに,世界保健機関憲章(WHO憲章)に記されている健康の概念がある.1999年に開催されたWHO総会では,従来の健康の概念である「身体的」「心理的」「社会的」な健康のほかに,「スピリチュアル(Spiritual≒meaning of life=人生の意味)」な健康を加えることが提案された. スピリチュアルな健康とは,生活する上で身体的に健康であるということや「こころ」が安定しているというだけではなく,自分が生きている意味を見いだし,それを認識して生きているかという問いかけであるといえる.ただ生活しているということにとどまらず,「生きている」という実感をもちながら生きる生活が求められているのである.その基準は,障害があるか否かということではない.たとえ身体的に病気がない状態であっても,日常的に身体の不調を感じている人や,精神的に障害がなくても社会の中で「生きにくさ」を感じながら生きている人もいる.一応病気がないとされる人たちであっても,その健康レベルはさまざまなのである. 身体障害をもちながらも,自らの考えや価値観に基づいて,健常者以上に充実した日々を生きている人もいる.私たちは,そういった生き方をしている人たちから多くのことを教えられる.障害のあるなしにかかわらず,自分らしく生きているか,自分の生きる目的を認識して生活を送っているかということが,健康を考える上で,大切な視点となる.さらに,たとえつらく苦しい体験であれ,それを自分の人生にとって意味あるものとして生かして生きているか,自分らしく生きているかということが大切であり,そういった「こころ」のあり方が健康の一つの指標となっている. 1こころの健康とはこころの バリアフリー宣言2004(平成16)年,厚生労働省は,精神疾患および精神障害者に対する正しい理解の促進を図ることを目的として,精神疾患や精神障害者に対する ①関心,②予防,③気づき,④自己・周囲の認識,⑤肯定,⑥受容,⑦出会い,⑧参画の八つを柱とした「こころのバリアフリー宣言」を公表した.何気ない様子で生活している人たちも,こころに悩みを抱えている場合がある.12

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