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た,精神障害をもちながらも自分らしく生き,成長する機会が与えられなければならないことは言うまでもない.(1)集団とは何か 集団とは人の集まりである.社会にはさまざまな大きさの集団があるが,その中で家族は最も小さな集団であり,大企業や官僚組織などは大きな集団といえるだろう.私たちはそれらのさまざまな集団の中で,互いに影響を受けながら生活している.集団の中で傷つき,葛藤やストレスを感じることもあれば,苦しいときに,集団の中の仲間に支えられてその場を切り抜けたという経験をした人もいるだろう.そのような体験は,すべて私たち人間にとって成長の糧かてになるものである. 私たちは人と人との間で生きる社会的な存在であり,この社会に所属する限り,社会集団から離れて一人で生きていくことはできない.ここでは,私たち自身が所属するこれらの集団の機能や特徴を理解し,私たちが普段,その集団の中で何を体験し,どのような影響を受けているのかを考えてみたい.集団について理解することは,治療チームの中で繰り広げられる患者と看護者との人間関係について考えたり,職場や学校といった,所属する集団の中における自分の役割に気付くきっかけになる.さらに,集団における看護者自身の経験と照らし合わせながら,集団に対して患者が抱く苦手意識を理解するきっかけにもなり得る.●さまざまな集団のイメージ● 「集団」と聞いて,私たちはどんなイメージを描くだろう.遠足やクラブ活動などの楽しい思い出もあれば,転校した学校でクラスの仲間からいじめられたとか,仲間はずれにされたといったつらい体験の場合もあるだろう.マスメディアからの情報で犯罪集団の怖さを知る一方で,自然災害の被災地に駆けつける心あるボランティアの人たちの存在に勇気づけられる人もいるかもしれない.さらには,多数のユダヤ人を虐殺したナチスの集団や,アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所において,餓死刑に処せられることになった囚人の身代わりに命を差し出したコルベ神父のように,集団に大きな影響を与えた人の存在を思い出す人もいるかもしれない.これらはすべて人間の集まりの中で起こった出来事である. 人は誰でも社会という大きな集団の中で,その影響を受けながら生きているのであるが,自分がどの集団に属し,その中で誰と出会い,どのような人間関係を築くかはさまざまである.以上のことから,集団の中におけるその人の存在のあり方は,その人の生き方に深く影響し,また集団にも影響を与えている.集団での体験は誰にとっても,身近でかつ影響の大きい出来事なのである.●グループのもつ機能● 集団の中でも,なんらかの意図やつながりをもって集まる人々をグループと呼ぶことがある.武井は「グループは,単に集まった人間の足し算ではない.グループには独特の力が働いて,そこに参加するメンバーに独特の作用を及ぼす」 1)と述べている. 人の集まるところには,必ず人間同士の相互作用が生まれる.そのようなグループ 5人と集団151精神障害についての基本的な考え方

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