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 「看護技術」,すなわち「看護師が日ごろ行っていること」と言ったら,皆さんは何を思い浮かべるだろうか. 患者の話を聴き,いろいろなことの相談にのっている姿だろうか.患者の横で食事の介助をしたり,身体を拭いている姿だろうか.血圧を測定したり,注射をしている姿,場合によっては亡くなり逝く人の看取りに関わっている場面を想起する人もいるかもしれない. そして今,皆さんがこの教科書を読んでいるということは,こうした看護師の姿やさまざまな関わりの中に,自分の生涯を通してなりたい看護師の姿,そのやりがいを見いだし,看護師を志そうと思ったからではないだろうか.そう,先に述べたさまざまな場面で看護師が行っていた行為が,まさに「看護技術」なのである. しかし,ぜひここで皆さんに考えてほしいのは,こうした看護技術の根底には,看護師のどういった知識や姿勢(態度)があるのか,ということである.患者の話を聴き,いろいろなことの相談にのっている看護師の姿は,患者の話を自分の家族のことのように親身になって聴き入っている(傾聴する)態度ではなかったか.患者の身体を拭いている看護師は,患者のかすかな表情や身体的な変化を見逃さず,手際よく拭いていなかっただろうか.亡くなり逝く患者を看取る看護師は,亡くなった患者の家族と同じようにその死を悼んでいなかったか.このように看護技術の根底には,看護師のもつさまざまな知識や看護者としての態度がある. 看護実践の構成要素として,知識・技術・態度があるといわれている(図1-1).これらの三側面は決して別々のものではなく,相互に強く関連し合いながら,その関係が正三角形を示すようにバランスよく看護実践に結びつく必要がある.つまり,「技術」単独で実践されるのではなく,その根底には知識があり,実践を行う上での態度がある. 「食事ケア」を例に考えてみたい.図1-2の場面において看護師が行っている看護実践はどんなものが考えられるだろうか. もし,「優しそうな看護師が満面の笑みで患者の口元まで食事を運んでいる」ことだけしか想像できないのであれば,それは看護実践の表層しか見ていないということになる.つまり,先ほど述べたその実践の根底にある知識や態度が見えていないのである. 例えば,この患者が高齢で体力がなく,食欲がない場合,看護師にはどのような知識・技術が必要になるのか考えてみたい.まず,この患者の栄養状態が現在どの程度なのか,また,この年齢の女性に必要な水分量や栄養所要量がどの程度なのかを知っ 1看護技術の根底にあるもの 2看護技術のもつ特徴 1看護実践の構成要素態度技術知識図1-1●看護実践を構成する要素14

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