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 医療の高度化,多様化は,これからの看護に十分な知識,正確な判断力,状況への対応力,さらには看護実践の科学的根拠を探究する能力などを求めている.しかし,それが看護に波及しどのような枝葉が伸びようが,看護実践能力を育成する上で重要となるのは,人間を対象として活動する基盤である「看護ケア基盤形成の方法」と,実践力を育成する基本的な技術である「看護基礎技術」の学習であり,その根や幹が看護実践能力を強化する教育内容のコア要素として位置付けられると考える. 本書はこの考え方に準拠し,まず「看護ケア基盤形成方法」の領域に相当するものとして,“人間関係を成立・発展させるための技術”や“健康学習を支援し成長を促す技術”を含む9章からなる看護行為に共通する援助技術を著した.「看護基礎技術」の領域では,“活動・運動を支援する技術”や“身体の清潔を援助する技術”をはじめ,5章からなる基本的な生活援助技術を示した. 平成15年に厚生労働省から出された「看護基礎教育における技術教育の在り方に関する検討会」報告は,看護基礎教育を履修した学生の技術能力が臨床の場から期待されている能力と乖かい離りしていることを問題として,看護基礎技術が安全・確実に習得できるよう,教育内容や方法の改善を求めるものであった.こうしたことを背景に,本書は技術学習項目ごとに技術の手順のみでなく,具体的な患者を想定した上で,エビデンスや留意点,倫理的な配慮などを一連の流れに沿って記載している.このことにより実際の患者をイメージしながら実践に即したかたちで学べることはもちろん,対象となる人の個別性を考慮し,知識に裏付けられた安全な看護技術提供という点で,非常に重要な視点を育てることにつながる. 改訂第2版では,臨地の場から特に乖離があると指摘される“生命活動を支える援助技術”,“治療・処置に伴う援助技術”の内容を加筆するとともに,平成19年の「看護基礎教育の充実に関する検討会」の報告で,看護師に欠かせない能力として強調されたコミュニケーション技術とフィジカルアセスメント技術の内容を整えた. 改訂第3版では,平成21年度から適用された看護基礎教育カリキュラムの改正内容を踏まえ,“生命活動を支える援助技術”をさらに包括的に充実させ,“与薬を安全かつ正確に行う技術”については到達目標を見直した上で新たに著した.生命活動や与薬に関する技術については,特に医療施設での看護や在宅医療において,医療の高度化とともに,診療の補助としての看護活動が生命に強く影響をはじめに

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