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15なぜネイティブのように英語が書けないのか序章 バックトランスレーションで発想の溝を知る 日本語と英語の言葉の意味の守備範囲の違いを克服することこそネイティブ発想の英語への近道ではないかと気づかされたのは、翻訳の学習にバックトランスレーションを取り入れているときでした。それは、いったん日本語に翻訳した論文を、原文をすっかり忘れたころに英語に翻訳しなおすというものです。実際に行ってみると、自分の英訳が原文の英語とは大きくかけ離れていることもあることに少なからず驚かされました。しばらくのあいだこのトレーニングを継続していくうちに、自分の弱点がすこしずつあきらかになっていきました。 多くの学びを得ました。そのよい例が日本語の「〜が可能である」という表現です。私のバックトランスレーションでは、どうしてもを多用しがちでした。しかし、これらは英語の原稿の中ではそれほど使用されておらず、逆に、私がこれまでまったく使ったことのないという動詞が頻繁に使われていました。これには新鮮な驚きを覚えました。これが私の『言葉の意味の守備範囲の違い』の原体験です。たとえば、以下のような英文がみられました。This treatment is unique in that it allows patients to lead a normal life.(この治療は患者がふつうに生活できるという点においてほかに類を見ない)This approach allows us to identify the disease-causing muta-tion.(この方法で疾患をひき起こしている変異を特定することが可能である)

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