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 私は,2013年5月に『若手ドクターのための大腸内視鏡挿入法~挿入パターンと道順』(メディカルレビュー社)という純粋な挿入法の教科書を刊行しました.この教科書で伝えたかったことは,大腸内視鏡挿入法には決まった手順があり,その手順を理解して,ポイントとなる部位をていねいにクリアしていけば,挿入難易度に振り回されずに,限られたパターンだけで挿入することが可能となるという内容でした.多くの先生方からありがたいご意見,ご感想をいただきましたが,中級者以上でなければ理解できない難しい理論が多く,「もっと基本的で入門書的なものを書いてほしい」といった要望を受けて,初級者向きの入門書を執筆することになりました. そこで初級者向きとはどういうものだろうかと想像したときに,頭で深く考えるような理論ではなく,求められるのはもっと単純で感覚的なイメージだろうと思い,自分が初級者だったころの「研修ノート」をひっぱり出してきて,読み直してみました.そこには,スコープを持つ右手元の感覚はどうあるべきだとか,ルーメンは内視鏡画面のどの位置でとらえるべきだといった感覚的な内容ばかりが書かれていました.一般的に,初級者は道具(スコープ)を自分の思い通りに操ることができません.そのような初級者に,どれだけ素晴らしい挿入理論を解説したところで,しょせんは「猫に小判」「豚に真珠」「馬の耳に念仏」でしかありません.今では大腸内視鏡挿入法の名人,達人と呼ばれている先生であっても,最初は誰でも猫であり,豚であり,馬であったのです.私も例外なく豚でした.まったく理解できない,まったく手が動かないところから始めて,1つずつ何かを感じて,何かをつかみ取りながら上達してきたのです. 本書では,これから大腸内視鏡を始めようとする初心者や初級者を対象にして,スコープの基本操作法のポイントをていねいに解説しました.解説に用いる内視鏡画像は写真ではなく,模式図にしたことで,操作法のイメージをより明確に示すことに成功しました.また,重要なポイントはそのまま「見出し」にしました. 本書を精読して,真摯に取り組めば,誰でも必ずうまくなることを約束します. 2015年12月中嶋清司はじめに初心者と初級者のための入門書です

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