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 一昔前まで,大腸内視鏡検査の手技はとても難しく,患者さんに苦痛を与える検査であると言われてきました.なぜなら,確立された大腸内視鏡挿入法が存在しなかったからです.大腸内視鏡挿入法は感覚的な要素が強く,上級者でもその手技をうまく言語化して伝えることができませんでした.僕が大腸内視鏡検査を始めたのは約20年前ですが,当時の挿入法を学ぶ手段としては,成書を読むか,感覚だけで挿入している上級者に教わるしかありませんでした.もちろんそれで上達するわけもなく,日本一の症例数を誇る,横浜の松島病院大腸肛門病センター 松島クリニックで研修を受けて初めて,それまでの感覚的な挿入法とは違う,しっかりとした挿入理論に基づいた大腸内視鏡挿入法を学ぶことができました. その後,僕は松島クリニックの非常勤医となり,その数年後に大阪から単身で中嶋先生が研修にやってこられました.このときに初めて中嶋先生と出会ったのですが,僕の顔は怖くて目力も強いので,初対面の人はビビッてなかなか声をかけてきません.僕も人見知りで自分からは声をかけませんので,当時の中嶋先生とはほとんど会話をすることはありませんでした.関西人である彼が僕に声をかけられないなんて,よほど怖かったのかもしれません(笑). 彼は横浜での1年間の研修を終えた後,関西に戻ってから大変苦労をし,試行錯誤して中嶋流の大腸内視鏡挿入法を確立されました.そして彼は,自分の挿入理論を余すことなく言語化し,世界で初めてそれをブログで発信したのです.これで全国区となった彼は,2009年に書籍『若手ドクターのための大腸内視鏡検査法』,2013年に『若手ドクターのための大腸内視鏡挿入法~挿入パターンと道順』を刊行されました.2009年の書籍が刊行されたころ,挿入法についてメールで頻繁に議論し合っていたのですが,彼の挿入法と僕の挿入法が限りなく近いということがわかりました.簡単に言うと,「押し込まない挿入法」です.押し込むという操作は患者さんに苦痛を与えます.たとえループを作ったとしても,押し込みさえしなければそれほど苦痛を与えないのです.くわしくはこの本にすべて書かれています.研修時代はほとんど会話をしたことがなかったのに,大腸内視鏡挿入法に関して,お互いが同じ方向を見て進んでいることを嬉しく思います. 今回,彼の第3弾の書籍『イラストで理解する大腸内視鏡操作法』が刊行さ推薦の言葉

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