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11「外科専門医」への期待と支援AI総論3 プロの外科医 「外科」は,心・技・体すべてが求められる総合格闘技のようなもの.手術は,「診断➡方針決定➡実行➡評価(PDCA)」の繰り返しだ.内科医に匹敵する情報収集や診断能力も必要だ.しかも外科ではもっと速いスピードで事が展開する.チーム内では治療全体を統括する司令塔としての役割をもつのが外科医.時には,力を尽くしても心苦しい結果になることもあるだろう.しかし,それを「不運」と片付けるのではなく,年数がかかってもその仇を討つために探求・開発する意地も外科医にとっては必要だ.4 患者にとっての外科医 患者にとって,外科医は自分の体にメスを入れる特別な存在である.外科医はそれに見合うだけの存在でなければならないし,当然ながら健康管理も仕事のうちだ.必要なときにきっちりと力を発揮できてこそ,プロである.「正しきものは強くあれ」とは土光敏夫氏(元経団連会長)の言葉.いくら患者に心で寄り添っても,確固たる信念を持っていても,それを実現できる実力(鬼手)がなければ,センチメンタリストに過ぎない.ただ,一気に高望みしてもかなわないのが現実.毎日の積み重ねが大事だ. 患者の前で「症例」と言うのは,ご法度だ.患者にしてみれば,自分はone of themではなくonly oneだ.医師として,常に「もし自分が患者の立場だったら」を考えなければならない.常に患者は遠慮していて,言いたいことの半分も口にできずにいることを忘れるな.メスを入れる立場だからこそ,人の心に配慮する気持ち(仏心)は必須である.若手医師:りっぱな外科医になるためには,どのような基準で修練施設を選んだらいいでしょうか.どこを見ても,いいことを書いていますが,実状は必ずしもそうではないかもしれないと,不安です.先輩医師:まず,外科医の基盤を培ってくれるところを見つけなさい.常に自分の30年先を想い描いて,外科医としても人としても尊敬できる人についていくことだよ.そして,いったん組織に入ったら,そこの人たちとは一生の付き合いだということを忘れずに.

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