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 ついに,新専門医制度がスタートしました.この新制度がめざす,①専門医の質保証,②効率的な専門医取得,③地域医療への配慮は,まさに高知県で必要とされていることですが,本県では人口の多い高知市と過疎化・高齢化が加速する地域との較差が拡大しつつあり,外科診療は複数の大学から来られた先生方が担っておられるという事情がありました.そんななかで外科医を育成するためには,出身校の垣根を越え県全体で当たることが不可欠と考え,指導医の先生方に相談したところ幸い賛同をいただくことができ,高知大学医学部附属病院を基幹施設とする23病院群からなる『「高知家」外科専門研修プログラム』がスタートしました.「Ryoma format」というローテーションで最先端の医療から地域の外科までを,「高知家」が一家総出で指導するシステムです. 本プログラムのスタートに先立ち,「修練の効率を上げるため,マニュアルを作りませんか」と呼びかけたところ,続々と原稿をいただきました.本書作成にあたり,「外科全般をカバーしながらコンパクトで安価に」という課題を解決しました.『心臓血管外科研修医コンパクトマニュアル』と同じポケットサイズですが,Webやリンクを通じて動画や参考図書につながる“窓”という役割を持たせました.海外の情報も得やすいように,キーワードには英語も添えました.「本書は教科書ではない」と割り切り,特に各論では教科書レベルの内容は項目のリストアップにとどめ,むしろスペースは理解を助けるイラストに使い,巻末には外科で頻用する略語や抗生物質・抗腫瘍薬をまとめました. 本書には,編者からの強いメッセージが込められています.いち早くサブスペシャルティを目指そうと狭く深い修練をしたがる若手への警鐘です.今後の外科医があるべき姿はまったく逆で,消化器外科を目指すなら,ことさら循環・呼吸の知識も持ちあわせてほしい.一疾患だけを治療する機会は激減し,ほぼ常に複数の疾患のなかでの外科治療という姿に彼らは遭遇するでしょう.手術の成績がよくなるほど,専門外のトラブルで足下をすくわれないよう注意が必要です.「外科医のくせにこんなことも見抜けなかったのか」と言われないよう,ぜひサブスペの専門医である前に全身を知る外科専門医であってほしいと願っています. 本書は,読者対象として外科専攻医に焦点を当てていますが,ぜひクリニカルクラークシップや他領域の医師,コメディカル,さらには医療機器メーカーや薬剤メーカーの方にも広く使っていただきたいと思います.最後になりましたが,たいへん多忙な診療にもかかわらず,快く迅速に原稿をお寄せいただいた執筆者の先生方に深謝いたします. 2018年7月 高知大学医学部外科学(外科二)講座 渡橋和政PROLOGUE

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