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31形成外科手術の基本第1章形成外科特有の手術手技局所麻酔・局所注射 形成外科医として初めに行う手術手技は,多くの場合,挫創の縫合か小さな皮膚腫瘍の切除術であろう.その際でも必要となるのが,局所麻酔や局所注射(多くはボスミン加生食が用いられる)である.しばしば大きなシリンジに細い針を付けている現場を目にするが,シリンジと針との間には相関関係がある(表1).簡単にいえば,大きなシリンジには太い針を,小さなシリンジには細い針が適している. 眼瞼などの少量の局所注射でよい部位にはしばしば1cc程度の小さなシリンジが用いられるが,その場合には30G針や27G針が用いられるべきである.一方,腹部などで大きな組織に対して注射するときには,10ccのシリンジに23G針を付けるようにする.手技のコツ局所注射の方法 部位に応じて注射の方法が少し異なるが,原則としてゆっくり注入することで,局所注射時の痛みは軽減する.そして,針の進め方は麻酔が効いていると考えられる部位から新しく刺入するようにする.眼瞼部のように皮下脂肪が少なく皮膚直下に筋肉(眼輪筋)があるような場合は,皮内注射に準じて皮膚に膨隆を作成し,その膨隆部から次の刺入を行うようにする.筋肉内に注射すると血腫が形成されやすく,術野の妨げになる.皮膚切開 皮膚切開の具体的な方法については,腫瘍切除の項(p.118 第3章-1.腫瘍切除と切除後の再建参照)で述べるが,基本的にはデザインに沿ってメスで皮膚を切開する.メスで切開する深さは原則として真皮下までであり,皮下脂肪が露出したらメスは不要となる.手技のコツ皮膚切開の方法 皮膚切開の際,一度の切開で真皮下まで切ろうとすると,予想以上に深く切り込んでしまう可能性がある.そのため,基本的には1刀目では真皮内にとどめ,2刀目で真皮下まで切開するように心掛ける.また皮膚組織が柔らかい部位では,追加の局所注射を切開直前に行い,組織を硬くした後に切開を行うほうがよい. 形成外科では主に15番メスと11番メスが用いられる.15番メスはほとんどの症例で用いられるが,ごく小さな腫瘍の切除や下眼瞼の切開のときのように,メス刃の先での微細な切開が必要な場合には11番メスが用いられる(図3).そのほか,およそ30cm以上の長い皮膚切開が必要なときには10番メスが用いられることもある.表1 シリンジと針の太さの関係(目安)シリンジ1cc2.5cc5cc10cc20cc50cc適した針27〜34G25〜30G23〜27G21〜25G18〜23G18G

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