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9第1章1「安静」は治療ではない!?なければならなくなったのです(東北大学病院には404台あります!)。 さらに、いったん入院してからはどうでしょうか。入院した患者はベッド上で安静にしていると、ほかにすることもないので眠くなります。確かに休んだり寝たりすれば、疲労感は軽くなります。血圧は下がり、尿蛋白も減ります。そして時間になれば、催促しなくても管理栄養士が栄養バランスやエネルギーを考え抜いた「自慢」の食事がベッドまで運ばれてきます。日々の家事や仕事から解放されて、「極楽極楽」という言葉が口をついて出てくるかもしれません。2~3日入院しただけで病気がよくなったような気すらするかもしれません。 しかし、何かおかしくないですか? じつは、長い期間の安静が大問題なのです。高齢者や虚弱者の場合は、1週間程度安静にするだけできちんと歩けなくなる場合も少なくありません。私は、肺炎の治療で安静にしていたがために歩けなくなった人を何人も見ています。高齢者や虚弱者は、もともと基礎体力・筋力が低下しており、安静にすることで体力・筋力がさらに落ちて、自立した生活が困難になるのです。竜宮城(病院)で楽な生活をしているうちに、自立できなくなり、日常生活に戻れなくなって現代版浦島太郎(患者)になってしまうというわけです。もはや現代の怪談といってもよいでしょう。 国民全体が若かった昭和の時代ならまだしも、現代の超高齢社会では、「安静」は治療ではなく、むしろ患者の自立を妨げる有害なものになったといっても過言ではありません。

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