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はじめに 医療スタッフにねころんで気楽に読んでもらいながら、患者の生活機能や運動機能を改善でき、生命予後の延長まで達成できる方法をお伝えするのが本書のねらいです。 2011年の米国医学雑誌に、「70歳以上の入院患者の30%以上は、入院時には認められなかった新たな障害を抱えて退院することになる。これを『入院関連機能障害』と呼ぼう」という衝撃的な論文が揭載されました(Covinsky, KE. et al. JAMA. 306(16), 2011, 1782-93.)。じつは、これはリハビリテーション領域では以前からよく知られた現象であり、「廃用症候群」と呼ばれてきたものです。 入院すると、患者はすぐに病衣に着替えます。血圧測定や検温がベッド上で行われ、食事もベッドまで運ばれるのが普通です。このようにして、患者は廃用症候群になっていきます。廃用症候群は、恐ろしいことに寿命を縮めます。体の状態をよくするつもりの入院が仇となり、本来の目的とは逆の結果になるわけです。患者が歩けなくなったりするのは、患者の病気のせいではなく、かかわる医療スタッフに責任があるといっても過言ではありません。 高齢化が進み、患者の様相が激変しました。内科治療で何とか内臓機能を維持できても、足腰が弱って生活範囲が狭くなってくる患者。内科疾患による障害に加えて、変形性関節症など運動器疾患による重複障害を抱えた患者。体力がどんどん低下する患者。家族の介護負担が増え、施設転院を余儀なくされる患者。このような患者がじつに多くみられる時代になってきました。 今や多くのエビデンスから、体力がない高齢者や障害者こそ寝たきりにならないようにみずから体を動かす必要があること、そして、医療スタッフがこまめに運動やリハビリテーションを指導し患者を励ます必要

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