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151第1章下肢静脈の解剖と生理末梢(下腿型)血栓と肺血栓塞栓症(PTE)の関係(図54)図6 図7) 一般に、 膝窩部より中枢側の深部静脈は一本の太い血管が場所によって名称を変えながら上行していく。そのため血栓により静脈が閉塞すると下肢症状が顕著に出現し、患者が病変を認識しやすい。一方、 下腿静脈は3分枝存在し、一対で走行し吻合も多い。したがって、広範囲に血栓が存在しても血行障害による腫脹や疼痛等の臨床症状を呈することが乏しく、病変を認識しにくい。 すなわち、下腿型の血栓症は臨床症状が少なく(弱く)、患者が病変に気付くことなく進展する傾向があり、血栓症の発見が遅れる。また、iliac compressionで生じた血栓は中枢側には進展しにくく、末梢側へと進展するが、ひらめ静脈等の下腿静脈の血栓は中枢側へ進展する傾向がある。中枢側へ進展した血栓は、膝の屈曲や筋肉の圧迫等で遊離し、PTEをきたす。つまり肺塞栓(PE)発症直後のエコー検査では、無症状で中枢進展した血栓が遊離した後の残存した血栓を下腿部で発見することになる。これらの特徴から、PTEの塞栓源検索時に下腿部の観察が重要であることが理解できるであろう。ひとくちメモ図5 血栓の好発部位(文献4より改変)DVTは、血栓の存在部位によって近位型(中枢型:腸骨型と大腿型、膝窩は中枢に含む)と遠位型(末梢型:下腿限局型)に分類される。骨盤内領域下腿領域大腿静脈近位部膝窩静脈遠位部総腸骨静脈総大腿静脈大腿静脈膝窩静脈ひらめ静脈後脛骨静脈前脛骨静脈腓骨静脈内側枝中央枝外側枝外腸骨静脈腸骨型近位型(中枢型)遠位型(末梢型)大腿型下腿型

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