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1加藤正哉 Seiya Kato ■ 和歌山県立医科大学救急集中治療医学講座教授1)バイタルサインのとり方と初期対応脊椎外傷患者が運ばれてきたらまず何をするのか12 外傷患者の受傷機転は,本邦では交通事故と転倒・転落が8割を占め,両者ともに脊椎・脊髄外傷を伴う可能性がある.日本外傷診療データベースの2015年版には,2010〜2014年の5年間で141,060例の救急搬送された外傷症例が登録されており,脊椎・脊髄外傷はそのうちの23,548例(16.7%)と報告されている1).一般的に全外傷に占める脊椎・脊髄損傷の頻度は2〜4%といわれている2)のに比して高頻度なのは,登録参加施設が救命救急センターなどの高次医療機関であるためと解釈される. 転落・転倒により救急搬送された外傷患者の初期診療において,たとえ患者の主訴が,両上肢のしびれや頚部痛,四肢麻痺,背部痛など,明らかに脊椎・脊髄外傷が疑われる場合でも,他部位の損傷があるかないかの評価を含めて,全身の診察と,必要に応じて救命のための緊急処置を行わなければならない.すなわち整形外科医もまた,外傷初期診療では,骨・関節・軟部組織の損傷だけを診療すればよ外傷初期診療ガイドライン(JATEC™)い,ということはなく,脊椎・脊髄外傷の初期診療として,損傷を受けた可能性のあるすべての身体部位の診察と処置を行わなければならない.詳細な病歴聴取と系統的な身体診察所見に基づいて診断が進められる一般診療と異なり,外傷初期診療では,限られた時間内に致死的損傷の有無を判断し,全身状態が不安定であれば,短時間にできる処置で生理学的異常を改善させることが求められる.見落としや手遅れを防ぐためには,外傷初期診療ガイドラインJapan Advanced Trauma Evaluation and Care™(JATEC™)のような,統一された定型的な診療手順が有効である3). JATEC™の目的は外傷患者の救命であり,機能予後や整容は,病態を把握し緊急処置によって生命危機が回避された後に,評価するのが原則である.したがって初期診療の手順は,簡便な手技で確実に効果を得ることができる気道の開放(A)と呼吸管理(B)が最優先され,次いで循環管理(C)を行ってショック状態から離脱できた後に,初めて中枢神経障害の程度の評価(D)を行う(図1).受傷AirwayBreathingCirculationDysfunctionof CNSExposure andEnvironmental controlprimary surveyのABCDEアプローチ(文献3より)図1
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