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3 21世紀に入り,肩関節の外傷に対するリバース型人工肩関節,横止め髄内釘,ロッキングプレートなど種々の手術器械の進歩や新たな手術法の開発により,その治療法も劇的に変遷するとともに良好な臨床成績を獲得できるようになってきた.そのため従来,手術を諦め保存的治療を駆使するしかなかった外傷にも手術の適応が広がった.その結果,未経験の先生方も肩の外傷の観血的治療に触れる機会が増加している.しかしながら,深部の関節であり,軟部組織に囲まれた肩関節の治療においては,肩関節の直視下,鏡視下手術,人工肩関節置換術や肩のリハビリテーションに精通していないと良好な肩関節機能が得られないばかりではなく,術中の問題,術後の合併症をきたし,再手術になることもまれではない.本書ではこれから肩関節周囲の外傷を手がけようとする先生方に向けて基礎的な解剖,適応,機種の選択などの記載とともに,上腕骨近位端骨折,胸鎖関節脱臼,肩甲骨骨折や上腕骨近位端骨折後の続発症(Fracture sequelae)などに対する治療戦略,さらに最新のリバース型人工肩関節置換術の手術のポイントとその合併症に対する対策など最新のトピックスを取り上げた.また,一目瞭然に理解していただけるよう,できるだけ写真や図を多用し,解説を簡潔にするよう心がけた.さらに実際の手術を感じていただけるようWeb動画で閲覧できるようにしているのも本書の特徴である. 2016年に刊行した『人工肩関節置換術 ─基礎と実際─』,また2017年の『肩関節再建術 ─腱板断裂,肩関節不安定症の治療戦略─』と同様,本書の内容は将来的に進歩していく部分も多々あるかと思われるが,若い先生方の臨床現場における座右のテキストとして有意義なものになり,さらにこのテキストを礎にして,肩関節の外傷に対する治療の新しい変革を期待するものである.末永直樹整形外科北新病院上肢人工関節・内視鏡センターセンター長序 文
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