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 日本小児集中治療研究会は2002年より世界標準の小児の救命処置法であるAHA-PALS(米国心臓協会の小児二次救命処置法)の普及を中心に活動してきた。これまでに約9千名のPALSプロバイダーを輩出している。 PALSの根幹をなす概念は「患者評価、重症度・病態分類(判定)を通して治療(介入)に結び付ける」というものである。これは、主に身体所見に基づいて行われている。しかし、近年身体所見の延長線上に超音波検査を位置づけ、このような評価・分類(判定)に役立てようというPoint of Care Ultra-sound(POCU)の概念が急速に成人救急、集中治療を中心に発達してきている。残念ながら小児領域の認知度は低いのが現状である。 当研究会では10年以上にわたりPALSの普及に努めてきたが、実際に身体所見だけで評価、分類(判定)を行うには限界があり、緊急時に細かい検査に踏み込むには時間がかかりすぎる。POCUは正にこのジレンマを解消し、現在のPALSの体系を補完するものと期待される。当研究会では小児のPOCUの普及のため、定期的に講習会を開催することとした。米国救急医学会が小児救急医用のPOCUプログラムガイドライン*を公表しており、それを参考にした講習会を行ってゆきたいと考える。本書はその講習会用テキストとして作成した。 豊富な写真と動画で、できる限り読者にわかりやすい内容となるよう、また自習できるように工夫して作成した。願わくば、POCUもPALSと同様、わが国の小児救急・集中治療の質の向上に少しでも役立つことができれば、筆者の望外の幸せである。*American Academy of Pediatrics. Pediatric emergency medicine fellow training in ultrasound: consensus  educational guidelines. Acad Emerg Med. 20(3), 2013, 300-6.  2016年10月序 文日本小児集中治療研究会理事埼玉医科大学総合医療センター小児救命救急センターセンター長櫻井淑男3

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