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8 日本小児集中治療研究会は2002年からAHA-PALS(米国心臓協会の小児二次救命処置法)1)の普及に取り組み、我が国の小児救急医療の質向上に寄与してきた。PALSの根幹をなす概念は「患者評価、重症度・病態分類(判定)を通して治療(介入)に結び付ける」というものである。これは主に身体所見に基づいて行われている。しかし、実際に身体所見だけで評価、分類(判定)を行うには限界があり、とはいえ緊急時に細かい検査に踏み込むには時間がかかりすぎる。これが今までのジレンマであった。 近年、身体所見の延長線上に超音波検査を位置づけ、このような評価・分類(判定)・治療(介入)に役立てようというPoint of Care Ultrasound(POCU)の概念が急速に成人救急、集中治療を中心に発達してきている2,3)。POCUは正にこのジレンマを解消し、現在のPALSの体系を補完するものと期待される。 本章では、小児のPOCUが今、なぜ必要なのかを解説し、その後にPALSを補完する一例としてRUSH exam4)の可能性を示したいと考える。 我が国でもすでに普及しているPALSは、小児救急患者に対する世界標準の対処法である。この根幹をなす概念は「患者評価、重症度・病態分類(判定)を通して治療(介入)に結び付ける」というものである。このプロセスにおいてPOCUを併用して改善できる余地がないか? というのが本書の狙いの一つである。 図1-1にPALSの評価・分類(判定)・治療(介入)の体系的なアプローチを示す。まず、第一印象で「意識」「呼吸」「循環」状態を視診で「良い」「悪い」「蘇生」と分類し、「蘇生」の場合は一次救命処置に入り、「悪い」場合は「評価」「判定」「介入」のサイクルに入る(図1-2)。問題点は、このサイクルの中にある。 第一印象で「悪い」と判断された場合、次に一次評価に入る(表1-1)。実際には、ABCDEの所見を30秒程度でとり、その後「呼吸」「循環」状態の重症度分類(判定)を行う(表1-2)。さらに必要な処置後に二次評価に入る。PALSとPOCUPALSの評価法と重症度・病態分類(判定)の限界1)体系的アプローチ1一次評価2

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