CPRを用いるときに知っておきたい診断学の基礎知識~ベイズの定理を中心に~ 本書では臨床での意思決定に有用なさまざまな臨床予測指標(clinical prediction rule;CPR)を取り上げます。それぞれのCPRには特徴がありますが、適切に使用するためには何を狙いとして開発されたツールなのか、それぞれのルールの特性(陽性/陰性尤度比や感度・特異度)はどうなっているのかを把握することが重要になります。そこで本項では、CPRのどのような特徴に注目すべきなのか、実臨床で診断確率を推定するためにどのように用いればよいのかという総論を説明することにします。■救急外来における診断推論の特徴 救急外来において、当直医に求められる役割とは何でしょうか。さまざまな答えがあると思いますが、致死的な疾患を除外すること患者が苦しんでいる症状を緩和することは必ず意識しなければならない点でしょう。 このとき、救急外来における「診断」にはどの程度の正確性が求められるのでしょうか。それは想起している疾患によって異なることを知らなければなりません。 救急外来において「〇〇は否定できません」というレジデントからのプレゼンテーションをよく耳にします。「否定できません」という言葉はある意味で正しく、ある意味では意味を持ちません。なぜなら、実際はどの疾患も否定する(=0%にする)ことはかなり難しいからです。診断とは不確実性を内包しており、決して1か0かではなく、鑑別診断を絞り込むときもAかBかではない点に注意しましょう。 つまり、診断の確率はアナログで語られるということです。すなわち、いくつかはじめに8Emer-Log 別冊
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