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CPRを用いるときに知っておきたい診断学の基礎知識~ベイズの定理を中心に~の疾患を鑑別に挙げる際に、Aの可能性が70%、Bの可能性が5%、その他(場合によっては原因不明)が10%という感覚で熟練医は各鑑別診断を想起しています。その中で救急外来において求められる役割である「致死的疾患の除外」を遂行せねばなりません。そのとき注意することは、危険な疾患はそうでない疾患に比べて、より低い可能性にならないと除外しにくいという点にあります。治療が遅れたりしても(万が一、見逃してしまっても)よいような症例では、事後確率がまだ高い状態であっても帰宅して様子を見ようと思うかもしれませんが、治療介入が遅れたり不適切な診断がされた場合に命に関わるような疾患は、「ほぼ考えられない」と言える状態にしてから帰宅させることが必要でしょう。例えば急性冠症候群を帰宅させるのに、「10%くらいの確率かも」と考えたまま帰宅を勧めるのは不適切であろうと考えられます。できれば「万が一」くらいまでは十分に可能性を下げておきたいと考えるでしょう。一方で、胃腸炎であれば命に関わるものではないので、10%というレベルに可能性を下げられれば十分とする考え方も許容できると思われますし、さらに高い確率で残ってもよいかもしれません。 また、患者が苦しんでいる症状を緩和することにおいても、鑑別診断の可能性を十分に上げることができれば疾患特異的な治療介入を実施できる可能性があります。 こうした面から鑑別疾患の可能性を適切に見積もることが重要であることが分かります。■CPRを有効に使える状況 以上のように考えれば、前述した救急外来での当直医の役割は、診断の見積もりという側面からは 致死的な疾患を除外すること → その致死的疾患の可能性を十分に低くすること 患者が苦しんでいる症状を緩和すること → 特異的治療による害を上回るだけ十分に可能性を上げることと言い換えることができそうです。 その可能性を上下するためには、病歴聴取や身体所見、各種検査による情報を加えることで疾患の確率を変化させることが必要です。その情報により疾患の確率を除外あるいは確定に導くことになります。 そして、そうしたときの情報は有用である必要があります。では有用な情報とは9Emer-Log 別冊9

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