刊行にあたって 残念ながら、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第3波が来てしまいました。第2波は、陽性者数こそ第1波の3倍でしたが、重症者数や死者数は少なく済んでいます。第1波のころは、感染者であっても検査を実施してもらえず、回復した患者も多数いたものと想像できます。医療機関へ収容されたのは、状態が悪化した患者に限られ、重症化してからの診療開始でした。実質的な患者数は、第1波のほうが多かったということになります。現在の第3波では、全国で、連日2,500人を超える新規感染者数となり、重症患者数も410人(11月26日)と第1波のピークを大きく越えてきています。間違いなく、医療機関への負担は、第1波を凌駕するものとなるでしょう。 東京医科歯科大学医学部附属病院では、2020年4月2日に最初のCOVID-19患者の受け入れを開始しました。その後、急速に患者数が増加する状況を受け、4月13日に救命救急センターの通常患者の受け入れを全面停止し、30床ある病床をすべて閉鎖し、COVID-19専用に振り分けました。地域の救急医療への対応ができなかったことに関して、謝罪いたします。通常の救急診療ができなくなったことから、救急科医師は全員COVID-19診療に全力で従事しました。11月27日現在、当院全体で244例の陽性患者(うち重症93例)と943例の疑い患者を診療してきました。これまでのところ死者数は10人に抑えられ、診療に伴う院内感染は起きておりません。 本書では、主に重症COVID-19患者を診療してきた救急科医師に、これまでの経験をもとに「病院と職員を新型コロナウイルスから守るため」「新型コロナウイルス陽性重症患者の診療はどうあるべきか」という観点から執筆してもらいました。全国の救急医療機関で、COVID-19患者診療に日々奮闘している医師、看護師、メディカルスタッフの皆様のお役に立てましたら幸いです。2020年11月 大友康裕刊行にあたってiii
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