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3血管外科領域、循環器内科領域に広く使用されるようになった。Supported angioplastyでは、1991年に古賀病院から4例(elective 3例、emergent 1例)12)、1993年には大阪警察病院から14例のelective supported angioplastyの報告13)がみられる。Elective supported angio-plastyに関しては、左冠動脈主幹部の冠動脈インターベンションの適応の問題や、インターベンション手技の向上によりPCPSを要する症例が少なくなったこと、初期の成績が不良であったこと14)などから、以後まとまった報告はみられない。一方、急性心肺不全に対する使用は全国的に急速に増加し、1992年に大阪大学から4例15)、大阪警察病院から9例の急性心筋梗塞後ショック症例16)、1994年に自治医科大学附属大宮医療センターから13例17)、1995年に東京女子医科大学から9例18)、1996年に大阪警察病院から20例19)、日本大学から12例20)、国立循環器病センターから46例21)の報告がみられる。また、1994年には66施設437例のPCPS研究会全国集計の結果が報告されている14)。救急領域の心肺脳蘇生における人工心肺の応用は1990年の札幌医科大学の報告に始まる22)が、この当時はローラーポンプを用いた従来のV—Aバイパスを使用していた。その後、PCPSの普及に伴い、ECPRとして救急領域の使用も増加し、適応も拡大され、院外心停止例の心肺脳蘇生にも応用されるに至っている。 PCPSの成績の詳細は他稿に譲るが、研究会発足当初は20%程度であった生存率が、45%前後にまで成績の向上がみられた23)。システムの変遷としては、当初はSarns社製の遠心ポンプ、外部灌流型膜型肺を組み合わせたシステムが主流であった。同時期にテルモ社が自社製のPCPS開発に着手し、1993年に最初の臨床使用報告がなされた24)。テルモ社製PCPSにはオートプライミング機能がありプライミング時のエアー抜きがきわめて容易であることから、現在ではわが国におけるPCPSの最大シェアを占めるに至っている。わが国におけるヘパリンコーティングシステムの使用は1994年に始まり16)、現在使用されているPCPSはすべてヘパリンコーティングシステムとなっている。ヘパリン全身投与量の減量が可能となりPCPS中の出血リスクが軽減したことは、前述したPCPS研究会全国集計にみられる成績向上に大きく貢献している。3.PCPSの構造と定義 前述の歴史的変遷からも理解できるように、PCPS研究会発足時からPCPSの定義は、「PCPSとは遠心ポンプと膜型人工肺を用いた閉鎖回路の人工心肺装置により、大腿動静脈経由で心肺補助を行うもの(ただし経皮的に穿刺せず外科的に切開して鼠径部からカニューレを挿入してもPCPSに含まれる)」とされており25)、 現在も継承されている7)。遠心ポンプの使用により、貯血槽を省いた閉鎖回路での人工心肺が可能となり、このため装置が小型化され、操作面でも簡易なもの(貯血槽の血液レベルの監視の必要がない)となっている。PCPSの名称は、経皮的心肺補助システムであるが、心肺停止症例では、大腿動脈を触知できず、かえって経皮的挿入に時間を要する場合がある。このため、とくに救急領域では、最初から鼠径部切開を行う施設も多く、経皮的挿入にこだわらないという考えが妥当である。PCPSという名称はわが国特有であり、同様の装置を用いていても海外の文献ではCPS、percutaneous cardiopulmo-nary bypass、emergent portable bypass sys-temなどと呼ばれている。[正井崇史] 1) Cooley DA,Beall AC,Alexander JK:Acute mas-sive pulmonary embolism.Successful surgical treat-ment using temporary cardiopulmonary bypass.JAMA.1961;177:283—6. 2) Phillips SJ,Ballentine B,Slonine D,et al:Percuta-neous initiation of cardiopulmonary bypass.Ann Thorac Surg.1983;36:223—5. 3) Vogel RA:The Maryland experience:Angioplasty and valvuloplasty using percutaneous cardiopulmo-nary support.Am J Cardiol.1988;62:11K—14K. 4) Vogel RA,Shawl F,Tommaso C,et al:Initial 参考文献1 ECMO/PCPSの歴史と定義Ⅰ総 論

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