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iii序文 ついにECMO・PCPSの本当の意味での聖書(バイブル)が完成した。 これまで、ECMO・PCPSについては数多くの書籍が出版されてきたが、一定の領域においてのみであった。また本格的なものは日本でECMO・PCPS治療を行っている人たちによるものではなかった。本書は、ECMO・PCPS・ECPRの3領域すべてにおいて、本当の意味で日本の叡智を結集した内容であるといえよう。 心肺蘇生におけるECPRを中心とした循環補助として、これまでPCPS装置が日本で独自に発展し普及したという歴史的背景から、ECPRは多くの施設で行われ、症例数・治療成績は世界のトップであり続けている。同様に循環不全でも、心筋梗塞やVADに至るまでの症例などに用いられ、非常に良好な成績を収めている。 一方、呼吸不全に対するECMOはエビデンスがなかったことから、世界的にも成人の症例報告は年間約100例に留まっていた。しかし、2009年のH1N1インフルエンザ・パンデミックにおいてECMOの有効性が認められ、再評価に至った。日本でも、日本呼吸療法医学会主導で治療レベルを世界水準まで高めることを目的とし「ECMOプロジェクト」がスタートした。そして2020年、新型コロナウイルス(COVID‒19)による重症呼吸不全に対し世界中でECMOによる治療が行われている中、本書が作成されている時点において、日本の救命率は約70%と世界トップの成績を収めるまでになっている。 日本のECMO・PCPS治療レベルは世界のトップレベルであることは間違いなく、より一層の治療成績の向上が望まれる。今後、最高レベルの治療を提供できるECMO・PCPSセンターを設立し、世界レベルのECMO・PCPS教育を行っていくことが重要となる。 もはやECMO・PCPSは特殊な治療ではなく、ある特定の知識とトレーニング、そして経験を積めば、各施設において確実に実行できる治療方法と考えてよい。多くの医療関係者がECMO・PCPS治療の本質を理解し、技術・能力の向上がなされることにより、一人でも多くの患者を救命できることを期待したい。本書がその一助となれば幸いである。 2021年1月吉日一般社団法人日本呼吸療法医学会理事日本COVID‒19対策ECMOnet代表かわぐち心臓呼吸器病院院長竹田晋浩

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