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9私が老衰に関心を持った理由序章老衰をとりまく臨床は奥が深い?老衰に興味を持ちながら、臨床に携わっていると、老衰をとりまく臨床的な問題の奥深さを感じます。1つは先ほどから出てきている、診断に関することです。たとえ、家族が「老衰でしょ?」と言っても、容易に状態を改善できるような原因があり、患者本人のQOL改善に寄与するようであれば、その原因を取り除いたり、解決したりするべきでしょう。高齢だからといって、なんでも「老衰だから」としてしまうのは非常に危険なことです。また、そうかといって患者・家族にとってメリットがないのに、病気探しを必要以上にするのも問題です。そして、さらに問題を複雑にしているのが、医学的定義が曖昧であったり、患者が高齢であったりするために、家族の考えや理解の影響を受けやすくなることです。このあたりに関しては、第3章で詳しく論じていきたいと思います。多様性をどう扱うか奥深さのもう1つは、「老衰」の臨床における多様性です。私は現在、在宅・外来・病棟・介護施設と様々なセッティングで、臨床に従事していますが、セッティングの違いによって、老衰のケアの仕方や多職種との連携に関して少し違いがあるように感じています。また、老衰と考えられる経過中にも、様々な急性疾患が起こることがあり、それをどこまで治療していくのか判断に迷うことも多々あります。そのような多様性を医療者としてどのように考え、扱っていくのかは難しい課題ですが、やりがいもあるところであると思っています。このあたりに関しては第4章で述べていきたいと思います。

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