はじめに老衰についての書籍を出さないかとお話をいただいたときは、正直びっくりいたしました。老衰の臨床については、曖昧な部分や不確実な部分が数多くあり、指針やエビデンスもないばかりか、私自身も日々迷いながら臨床を行っているからです。そのような内容を書籍にすることができるのであろうか、はたして読者の皆様にとって意義のあるものとなるのであろうかと、お話を受けるべきか迷いました。しかし、私と同じように高齢者診療の場において、老衰を取り巻く諸々の問題について悩んだり、迷ったりしている方々に、少しでもヒントとなるようなことが提供できれば、また、少しでも議論のとっかかりとなればと思い、今回本書を出版させていただく運びとなりました。前半で老衰における統計的な背景や私が細々と行ってきた研究内容の提示などを行い、老衰における臨床にどのような問題点があり、現状がどうであるのかについて書かせていただきました。後半は、老衰における臨床を実践するにあたっての留意点や考え方、工夫などについて書かせていただきました。ご興味のあるところから読んでいただければと思います。内容については、エビデンスなどの根拠が乏しい分野であるため、私見や経験からの発言も多く含まれておりますがご容赦ください。少しでも読者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。2019年4月今永光彦
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