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1970年代まで:医療機関での治療が普及9から臓器疾患の時代になったことを意味します。そして戦後、医療に関するもう1つの大きな変化がもたらされます。治療する場所の中心が病院になったのです。1961年に国民皆保険が実現するまで、多くの国民にとって入院は簡単ではありませんでした。当時は入院施設が少なく、医療技術も今ほど高度ではなかったため、65年頃まで、感染症や脳血管疾患、心疾患など急性疾患の患者は診療所を外来受診するか、それができない場合は医師に往診を依頼しました。医師が患者や家族の依頼によって患者宅を訪問し診察する往診は、現在の訪問診療とは異なる仕組みで、当時は一般的でした。この時代の往診は、さらにさかのぼれば、江戸時代の医療の形の継続でもあります。この頃は日本人の死亡場所の8割以上が自宅で、働き盛りなど若い世代も自宅で亡くなっていました。60年代の平均寿命は60歳代、高齢化率は6%台前半でした。今考えると、家で当然のように看取りが行われていたのが不思議に思えます。国民皆保険が実現し公的医療保険が整備されたことで、医療費はその財源で賄われるようになり、病院が増え始めます。その一方、公的年金が完成したとはいえ、当時の高齢者の生活が年金だけで立ち行くことはほとんどありませんでした。そうした背景から1963年、「老人福祉法」が制定され、「特別養護老人ホーム」が誕生します。しかし、当時の特別養護

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