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はじめに 小生が2006年から64列CT装置を使用し始めてもうすぐ10年になる.この10年を振り返ると当時の驚きは現在の常識に変わっている.クオリティの高い画像撮影がどこまでできるのか,プラークをCTで評価することができるのか,どこまでCTが信頼できるのか,すべてがチャレンジであった.その一方で,CTでもっといろいろなことができるのではないかという無限の期待も抱いていた.それらのチャレンジや期待は徐々に明暗が明確となり,わかることとわからないこと,役立つ情報と必ずしも役立たない情報の区別が見えてきた.今,話題のCT─FFRなどの新たな発想による利用法はもちろん今後も出てくるであろうが,一般的な利用価値の探究には一応のピリオドが打たれたように思う.しかし,それらがCAGと同等に冠動脈治療の現場で活用されているかというと,それに及んでいるとは言いがたい.もちろん,CAGが冠動脈診断のゴールドスタンダードであることは間違いないため完全に同等にはなることはないものの,利用価値を理解はしていても思うように利用できていないのが多くの実情ではないだろうか. 我々は2011年に「インターベンショナリストのための心臓CT 研究会」を発足させ,PCIにおける心臓CTの有用性とその活用法を探究し,その考え方を共有することに努めてきた.現在までに18回の研究会を開催し,数名の海外ドクターからも興味を持って参加いただいている.ある程度心臓CTの活用ポイントが明確化した後の2013年には,研究会の中心メンバーで『インターベンショナリストのための心臓CT活用ハンドブック』を執筆した.それは症例を用いてCTの利用価値をポイントごとに分けて解説した,いわば基礎的な内容であった.その執筆から3年が経過し,徐々にではあるがCTに対する興味,理解,活用が浸透しつつあることも実感できる.実際に我々「インターベンショナリストのための心臓CT研究会」での議論の内容も発足当時と比較すると格段に有意義な内容に進化している.その経過のなかで基礎的CT情報をいかに実臨床のPCIで応用していくか,どのような症例に対して高い有益性を発揮するかといった実践的テーマが求められるようになってきた.そのなかで特に慢性完全閉塞病変(CTO),石灰化については多くの方からCT情報を期待されている.そこでわれわれは,前書『インターベンショナリストのための心臓CT活用ハンドブック』ではおおむねCT所見で切った利用法を提示したのに続き,主に複雑病変を対象とした臨床所見で切ったCTの活用法を紹介することがさらにCTの有効活用の普及に貢献できるのではないかという考えに至った. 本書では,現在CTに対して最もニーズが高いと思われる複雑病変分野を重点的に取り上げ,かつ複数のCT所見を複合的にPCIに活用するコツを提示できるよう努めた.また,臨場感が出るように前作同様に症例集という形態をとった.本書が単なる心臓CTのマニア本にとどまらず,現在複雑病変を積極的に治療されている,もしくはこれからそれを行おうとさ

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