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2 一過性意識消失をきたす原因の一つに失神があります.失神は循環器異常により発生する症状であるにもかかわらず,失神患者が循環器内科を受診するとは限りません.一過性の意識消失で救急搬送され,そこで失神と判断されても循環器内科に紹介されるとは限らないのです.その結果,患者は不必要で過剰とも思われる関係のない検査まで受けるものの,結局は原因不明とされ,挙げ句の果てに「心配ありませんよ」の一言で済まされてしまう.失神が再発しても同じ検査の繰り返しで,その結果,患者は別の医療機関を受診し,そこでもまた同じ検査を受け,患者のたらい回しが始まるのです. 本書の筆者らは,これまで相当数の失神患者を診察し治療した経験をもっています.筆者らの診察を受けた患者は,すでに数カ所の医療機関を受診し,原因も明らかにされず適切な治療がなされていないため再発を繰り返し,すがる気持ちでやっと適切な失神の診断・治療ができる医師にたどり着いた患者がほとんどなのです. 失神には,日本循環器学会から「失神の診断・治療ガイドライン」が出さ れ,しかも欧州や米国でも同様のガイドラインが出されています.一つの「症状」に関してのガイドラインが出されているのは,おそらく失神だけでしょう.その理由は,誤診や原因不明とされてしまう患者が極めて多いこと,不必要な過剰検査が多くなされ医療経済的にも医療費高騰の大きな原因となっていること,そして関連疾患の医学知識と手順を身につけないと適切な失神診療が困難であること,があるからです. 本書は,総論で失神診療に最低限必要な基本的知識をまず習得したうえで,各論では実際の症例を中心に,診断に至る考え方や,原因診断に至るまでの検査の手順について詳細に記載してあります.少し難しい症例も含まれはじめに

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