日本の循環器医療を地域で支える“It is not in the stars to hold our destiny but in ourselves.” -William Shakespeare, “The Tragedy of Julius Caesar” 循環器診療の様相は、この30年間で激変しています。その大きな要因のひとつに、未曽有の高齢化社会に突入したことがあげられます。外来診療をしている皆さまがお気づきの通り、高齢循環器疾患を有する患者が激増し、病院においても心不全患者の大多数は高齢者であるというのが現状です。少子高齢化に伴い、医療費の高騰も声高に叫ばれており、今後、医療形態も大きく変わらなければいけないような強い風を感じております。生活習慣病管理をクリニック開業医が行い、重症になれば病院にお願いするという旧態依然とした医療システムは限界を迎えています。病院から在宅への移行、循環器疾患の看取りなどが、昨今の大きな潮流となっていることは、クリニックに携わっている皆さまは実感されていることだと思います。一方、入院や在宅になる前にもう少しすることがないのかとgate keeperとして奮闘しているクリニックも重要な意味を持っています。このように、待ったなしの大きな変革に向き合っている循環器クリニックの医師が団結し、情報共有して、よりよい医療を患者に提供できるシステムの構築が急務です。そこで、同じような志を持った循環器を標榜するクリニックに携わる医師たちが集まり、純粋に患者とその家族の生活を守る情報交換のためのプラットホームになるべく、非政治的、非営利的なJapan Cardiology Clinic(JCC)Networkを立ち上げました。 本書は、JCC Network会員である一般循環器クリニック診療医の立場から、現在の循環器外来の実情、クリニックで必要な検査、在宅医療、患者が使える医療資源など多岐に渡り記載しています。循環器クリニックに携わる、あるいは携わろうとしている循環器医だけではなく、循環器外来にかかわる看護師、薬剤師、在宅医療にかかわる皆さま、さらには循環器疾患を有する患者を診察している一般内科医、病診連携に携わる病院勤務医の皆さまにお読みいただき、現在の循環器クリニック外来の現状をご理解いただき、本著が、循環器疾患を有し、困っている患者とその家族を支える一助となることを願います。2020年2月JCC Network代表 大西勝也はじめに
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