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261.はじめに 1981年、著者は医師になり、大阪大学医学部第一内科(当時)に入局した。当時、第一内科は循環器だけでなく、消化管、肝臓、糖尿病、脳血管、腎臓など臓器別にいろいろな専門グループがあったが、その中でも心臓に特に興味があった著者は、心研センター(現大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学教室)に配属を希望した。当時の心研センターのボスは、井上通敏講師(当時)だった。その井上通敏講師が、文部省(現文部科学省)研究費補助金の申請書を一生懸命原稿用紙に書かれていたのを昨日のように思い出す。そして、その申請書の緒言に書かれていた言葉が今も強く私の心に残っている。曰く、「心不全の病態は、多岐にわたり分子生物学的アプローチも多くなされてはいるが、その本質は心機能低下であり、心臓がどれだけの血液を拍出できるかにかかっている」。今になってもこの名文は、著者の頭から離れないし、著者の循環器医師の原点である、と言っても過言ではない。あれから40年、ここまで心不全の臨床と基礎研究が進んできても、結局は、心不全の病態は、心拍出量が十分でなくなることに起因する。最近注目されている「心収縮性の保たれた心不全」も、心拍出量を保つために心臓に血液が流入するメカニズムの障害と考えれば、病的な心臓において心拍出量を十分に保つために生じた病態ととらえることができる。 この40年の間に飛躍的にその「心機能」への理解は進み、心拍出が十分でなくなることに対して、次のような多くの知識と技術が加わってきた。◆◆心機能、前負荷、後負荷、心拍数の異常の合わせ技であり、そのバランスによりHFrEF(heart◆failure◆with◆reduced◆ejection◆fraction、心収縮性の低下した心不全)にもHFpEF(heart◆failure◆with◆preserved◆ejection◆fraction、心収縮性の保たれた心不全)になりうること◆◆生活習慣病である高血圧、糖尿病、脂質異常症が関与すること、冠血管の関与も強いこと、生体内の神経内液因子が強く関与すること、予想外に遺伝子発現異常の関与が強いこと◆◆COPD(chronic◆obstructive◆pulmonary◆disease、慢性閉塞性肺疾患)やCKD(chronic◆kidney◆disease、慢性腎臓病)などの他臓器の合併症が関与すること◆◆心臓移植のみならず補助人工心臓による治療も可能になってきたこと◆◆機械学習・データマイニングなどのAI(articial◆intelligence、人工知能)から、新しい切り口が得られるようになってきたこと◆◆緩和医療が必要になってきたこと

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