27章Ⅰ心不全とは そのため、心不全の診療に携わる者は、そのすべての知識・状況を把握しておかないといけない。心不全の病態が悪化する患者の新たな治療オプションを考えるうえで、経口薬物療法をどこまで推し進めるのか、どこで強心薬の持続点滴に切り替えていくのか、どの時点で心臓移植を患者さんに提案するか、緩和医療を適応するのか、それらはすべて主治医もしくはその心不全医療チームの判断によることになる。その時、担当した医療チームに対しては、一点の曇りのないクリスタルクリアーな判断が求められる。もちろん、病気との闘いだからうまくいかないこともあるが、心不全と闘うためのロジックは完璧でないといけない。本書では、私がこれまで経験や文献、自分の研究から得られた知識のすべてを開示し、心不全の診療に携わるすべての医療人が完璧なロジックで心不全に立ち向かってもらいたいと考える。2.心不全の定義と疫学 心不全とは、「心臓ポンプ機能異常により心臓から全身への血液供給が十分に行えないため、呼吸困難、浮腫などのさまざまな症状を呈する症候群」である。表Ⅰ-1に、フラミンガムの心不全診断基準を示した1)。心不全で起こりうる症状が書かれているが、心不全の初期や軽度の心不全状態では、この基準に当てはまらないことがあるので注意が必要である。 一方、日本循環器学会と日本心不全学会は「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。」と解説している。これは、フラミンガムの心不全診断基準を一般人にわかりやすく表現したものである。 心不全を引き起こす疾患は、心筋梗塞、弁膜症、心筋症、不整脈、高血圧など極めて多岐にわたる。心不全患者数は、超高齢社会を迎えた日本において、増加大基準夜間発作性呼吸困難、頚静脈怒張、湿性ラ音、心拡大、急性肺水腫、Ⅲ音奔馬調律、静脈圧上昇、循環時間延長(≧25秒)、肝頚静脈逆流治療に反応して、5日間で4.5kg以上の体重減少小基準下腿の浮腫、夜間咳嗽、日常的な労作での呼吸困難、肝腫大、胸水、身体活動の低下(最高時の1/3以下)、頻脈(≧120bpm)大基準2つ、1つの場合には小基準2つが必要。表Ⅰ-1◆フラミンガムの心不全診断基準
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